政策創造論
秋学期(火) 18:55~20:25 310K教室
行政などにおける政策形成過程では、多様な関係者との調整を欠かすことはできない。特に、公共政策は不特定多数の「市民」や「国民」などに影響を及ぼすため、多様な意見を政策にとりまとめる合意形成の能力が行政には求められる。しかし、意見を聴くだけの「市民参加」では、合意形成が図られるどころか、逆に異なる意向を持った「市民」間での対立を煽るリスクも高い。また、法や条例等に定められた手順に従う(パブリックコメントなど)だけで合意形成が図られることも稀である。だからこそ、対象とする政策課題の特性や政策の目的を踏まえた適切な合意形成プロセスの設計が行政に求められているのである。そこで、本科目では、多様な政策を創造するにあたって必要とされる合意形成プロセスについて、ステークホルダーとの利害調整や国民との熟議などを念頭に、プロセス設計や場の運用ができる知識と能力を涵養することを目的とした講義と演習を行う。
教科書
・松浦正浩著 「実践!交渉学:いかに合意形成を図るか」 ちくま新書, 2010.
・サスカインド、クルックシャンク著 「コンセンサス・ビルディング入門」 有斐閣, 2008.
スケジュール(予定:台風で9/20休講のため順延)
9/27 |
概論 |
・講義概要について紹介 |
10/4 |
環境紛争の歴史 |
・公害、公共事業、エネルギー問題などに関する環境紛争(市民運動)の歴史を概観し、行政などによる合意形成プロセスの重要性を理解 |
10/11 |
現場の観察(プロファイル) |
・実務家のストーリー(プロファイル)を熟読し、議論を通じて、公共政策の現場における調整機能の必要性を理解 |
10/18 |
公共政策の合意形成の枠組み |
・市民等を交えた合意形成プロセスの類型(参加・協働・熟議)を理解するとともに、政策決定との接続、位置づけ、意義などを理解 |
10/25 |
協働による合意形成プロセスデザイン |
・交渉による利害調整を狙った協働による合意形成プロセス(協議会等)の全体像と理論的背景を理解 |
11/1 |
ステークホルダー分析 |
・ステークホルダー(利害関係者)とその利害関心を類型化するステークホルダー分析の必要性、概念、手法を理解 |
11/8 |
対話技法・ファシリテーション |
・ステークホルダーが対話する場を効率的かつ公正に運用するための具体的な技法を理解、体得 |
11/15 |
合意形成プロセス設計演習(1) |
・これまでに学んだ内容をもとに、実際の政策課題を題材に、合意形成プロセスの設計を試行 |
11/22 |
合意形成プロセス設計演習(2) |
・前回の結果を教室で発表し、相互に批評し、合意形成プロセスの設計の実務的な課題を理解 |
11/29 |
根拠に基づく政策(EBP) |
・政策決定の(科学的)根拠が求められるなか、合意形成過程における根拠の取り扱い、共同事実確認手法について理解 |
12/6 |
トランジション・マネジメント |
・ステークホルダーの合意形成では逆に問題が悪化する課題の存在について理解し、その解決に向けたトランジションについて理解 |
12/13 |
熟議の概念と実践 |
・交渉では解決しない価値観(規範)に係る意見対立を克服するための熟議の必要性と、ミニパブリクス等の具体的方法論を理解 |
12/20 |
熟議プロセス設計演習 |
・実際の政策課題を題材に、熟議のプロセスを設計し、教室で発表・批評することで、実務的な課題を理解 |
11/10 |
現代的課題 |
・現代の行政における合意形成の諸課題を議論した後、これまでに学んできた方法論の適用可能性について議論 |
1/17 |
まとめ |
・これまでに学んだ内容をすべてふりかえり、質疑応答、議論等を行う |