政策創造研究
秋学期(火) 18:55~20:30 310H教室
政策形成過程では、多様な関係者との調整を欠かすことはできない。特に、公共政策は不特定多数の「市民」や「国民」などに影響を及ぼすため、多様な利害関心や価値観を政策にとりまとめる能力が行政機関に求められる。法や条例等に定められた手順に従うだけ、あるいは意見を聴くだけの「市民参加」の場を設けるだけでは、異なる意向を持った「市民」間で対立を煽ることも多い。だからこそ、対象とする政策課題の特性や政策の目的を踏まえ、ステークホルダーとの交渉または不特定多数との熟議などによる合意形成プロセスの設計と運用能力が、政策形成に携わる者に求められる。
他方、関係者合意を過度に重視することが逆に、社会の持続可能性を高めるために必要不可欠な制度改革を遅滞させる危険もある。地球温暖化、人口減少、年金問題など超長期かつ国家・地球規模の社会課題への対応は、トランジション、トランスフォーメーション(移行、改革)と呼ばれる、社会制度・ルール・文化等を根本的に見直すことが必要なことが理論的に明らかになっている。そのようなトランジションの激流を戦略的に乗り越える能力もこれからの政策形成においてリーダーシップを発揮する者には期待される。
本科目では、政策創造に必要な合意形成プロセス(ステークホルダーとの利害調整や国民・市民の熟議)と、トランジション・マネジメントのプロセスについて、その設計や運用のための知識と能力を、講義と演習を通じて涵養する。特に今年度は、受講者各自が具体的な課題を設定し、その課題に対して適切なプロセスを自ら設計することで理解を深める予定である。
教科書
・松浦正浩著 「実践!交渉学:いかに合意形成を図るか」 ちくま新書, 2010.
・サスカインド、クルックシャンク著 「コンセンサス・ビルディング入門」 有斐閣, 2008.
スケジュール(予定)