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日本における公共紛争処理の現地適応化: 審議型政策形成実験から得られた知見 (Ph.D.論文)

本文は英語ですが、アブストラクトのみ日本語に訳しました。


日本における公共紛争処理の現地適応化:
審議型政策形成実験から得られた知見

Localizing Public Dispute Resolution in Japan: Lessons from
experiments with deliberative policy-making

松浦正浩

Submitted to the Department of Urban Studies and Planning on August 9, 2006
in partial fulfillment of the requirements for the degree of Doctor of Philosophy in Urban and Regional Planning

日本の社会資本整備に関連する紛争に、米国で実践されているコンセンサス・ビルディング・プロセスを適用することができるだろうか? 1990年代以降、高速道路、ダム、港湾、空港、鉄道の建設、また都市再開発に向けた事業提案が、さまざまなステークホルダーにより反対を受けてきた。日本の実務家の間では、これらの社会資本整備紛争の解決策として、米国で実践されているような形でコンセンサス・ビルディング・プロセスを活用できないかどうか、関心が高まっている。しかし交渉学および紛争処理の理論家および実務家、また政策移転論の研究者は、「輸入する」国と「輸出する」国の間に存在するさまざまな文脈の相違に関連して、そのような国家間の移転に疑問を呈している。

本博士論文では、コンセンサス・ビルディング・プロセスの導入と文脈の関係について、コンセンサス・ビルディング・プロセスの日本の文脈への適応化(adaptation)と、米国から日本に移転されたプロセスが機能するために必要だと予想される組織変革(organizational change)、2つの側面から検討した。組織、規範、規制など、日米の間に存在する文脈的相違の多様性を考慮すると、適応化と組織変革が起きなければ、日本における社会資本関連紛争の解決にコンセンサス・ビルディング・プロセスは機能しないと考えられる。なお、日本の社会資本整備計画に関する文脈情報は、日本の実務家40名に対する綿密な聞き取り調査により把握した。

適応化と組織変革の戦略を検討するため、本研究では、徳島県で実施された交差点改良事業に関するコンセンサス・ビルディング・プロセスの試行事例を18ヶ月の間、詳細にわたり観察した。試行事例の詳細な観察により、クリエイティブな適応化が実際にさまざまな形で起きていることが明らかになった。この観察に基づき、本論文は、コンセンサス・ビルディング・プロセスが海外に移転された場合、適応化と組織変革が同時に実行されなければならないことを明らかにした。

主査: Lawrence E. Susskind (Ford Professor of Urban and Environmental Planning, Department of Urban Studies and Planning)
副査: D. Eleanor Westney (Society of Sloan Fellows Professor of International Management, Sloan School of Management)
Susan Silbey (Professor of Sociology and Anthropology, Anthropology Program)