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公共政策の交渉分析

秋学期(火) 18:55~20:25 310H教室

 「交渉」というと何か身構えてしまう人も多いでしょうが、実際のところ誰もが毎日交渉を行っています。たとえば家庭内での会話(例えば「今夜のご飯は何にしようか?」)なども一種の交渉です。また同時に、国家間で条約を締結する際にも交渉は行われています。これら多様な「交渉」を幅広くとらえ、それらの共通点から見出された基本的な枠組みが「交渉学」です。幅広い分野の現場で適用可能であるため、現在では全米各地の専門職大学院(公共政策大学院、法科大学院、ビジネススクール、都市計画大学院など)で教えられています。  「交渉」のスキルは生まれもってのものであって、勉強や練習をしても改善は難しいと思い込んでいる人が多いと思われますが、実際はそうではありません。「交渉学」の枠組みを用いて反省することで、交渉に係る問題の正しい理解が可能となり、「交渉学」を念頭に実際の交渉を進めれば、適切な問題改善へとつなげることができます。また、「交渉」の最終目標は相手を打ち負かすことではありません。むしろ、自分と交渉相手が今後共存できる方法をお互い納得できる形で見つけることが交渉の目標です。ですから、今回の講義で扱う「交渉学」のことを「Win-Win交渉」などと呼ぶ人もいます。  本講義はスキルの体得に主眼を当て、米国の専門職大学院で長年行われている「交渉学」の授業とほぼ同じ形式で進行します。交渉スキルは自動車の運転と同じく、学習と実践を繰り返すことで始めて体得できるものです。講義では複数の交渉シミュレーション演習を用い、学習した「交渉学」の理論や方法論を実際に自分自身で試していただきます。また、現場への適用を常に念頭に置きながら講義に参加していただくため、ディスカッションへの参加を重視します。本講義は聴講の場ではなく、むしろ講師を含めた「学びあいの場」だと考えて参加してください。

教科書・資料

・松浦正浩著 「おとしどころの見つけ方」 クロスメディア・パブリッシング, 2018.

・フィッシャー・ユーリー著 「ハーバード流交渉術」 三笠書房, 1990. 

(参考書/松浦正浩著 「実践!交渉学:いかに合意形成を図るか」 ちくま新書, 2010)

スケジュール

 

1

概論

・講義概要について紹介
・対象とするテーマ、問題意識、到達目標など
・「とにかく勝つ」ゲーム

2

立場と利害、BATNA

・交渉における「立場(position)」と「利害(interest)」の分離
・交渉が不調に終わったときの代替案を認識する必要性

3

配分型交渉

・単一の条件についてのみ交渉する配分型交渉(distributive bargaining)の分析

4

交渉演習(1)

・配分型交渉について2名1組のペアで交渉を演習
(「桜井さんvs.小池さん」演習)

5

統合型交渉

・複数の条件をパッケージとして交渉する統合型交渉(integrative bargaining)の理論的背景と実際の理解

6

統合型交渉(2)と補足事項

・統合型交渉の復習と心理的技法に関する捕捉
(「掃除当番」ミニ演習)

7

交渉演習(2)

・統合型交渉について2名1組のペアで交渉を演習
(「水無月マンション開発事業」演習)

8

多者間交渉としての公共政策

・公共政策の形成過程を多者間交渉と認識することで、その課題とプロセスの重要性について理解

9

交渉演習(3)

・インフラ整備の多者間交渉について複数名で交渉を演習
(「ハーボコ」演習)

10

ファシリテーション

・多者間交渉を効率的に進めるためのファシリテーション技法について実践的に学ぶ

11

交渉演習(4)

・「仲介役」を交えた3名1組のチームで交渉を演習
(「成橋市ホームレス問題」演習)

12

価値観論争と配分の正義

・交渉では解決の難しい価値観(規範)に関する論争の存在について理解し、公共政策部門における実践的な対応について議論する
・いかなる交渉にも伴う配分の倫理面での課題について理論的な理解を深め、実務的な課題を念頭に議論する

13

交渉演習(5)

・価値観を含む交渉課題について複数名のチームで交渉を演習
(「ウィリアムスvs.ノースヴィル町」演習)

14

交渉演習(6)

・総復習の意味で基本的な2者間交渉を演習
(「サリーソプラノ」演習)

15

まとめ
期末テスト

・これまでに学んだ内容について総復習を行ったうえで、 期末テストを実施