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トランジション・マネジメント

地球温暖化問題、高齢化問題など、大規模な社会課題の解決に向け、草の根レベルでの取り組みが進められている領域は数多く存在する。しかし、これらの草の根レベルでの取り組みが、問題解決に目に見える形でつながらないのは、各問題に対して経済関係を含む多様な利害を有するステークホルダー群が存在するなかで、それらのステークホルダー群を支配する構造的要因が転換しないため、現状の均衡解へとステークホルダーが誘導されてしまうことも一因ではないか。

持続可能な未来社会を目指すのであれば、ステークホルダー間の草の根の合意形成ではなく、構造的転換までをも見据えた問題解決の方法論を検討する必要がある。しかしまた、トップダウンで新たな社会構造を強制する方法論ではなく、変革の対象たるステークホルダーが民主的に議論に参加できるという要件が、現代社会における政策プロセスには具備されていなければならない。

その一つの方法論として、「トランジション・マネジメント(transition management)」がオランダにおいて提唱され、実践されてきた。トランジション・マネジメントは、持続可能な社会に向けて、ステークホルダーの全体的合意形成を模索するのではなく、持続可能な社会に貢献する技術ニッチ(niches)を特定し、それらを現場において小規模ながらも試行することで、新たな技術ニッチを社会に対峙させることで、ステークホルダーを支配する構造的要因に再帰性(reflexivity)をもたらし、最終的に、新たな技術と構造的要因が均衡する持続可能な社会へと導く、という考え方である。この考え方は、従来のステークホルダー合意を前提とした政策形成の行き詰まりに対応でき、さらに、構造的要因について市民の合理的直接対話を要請する熟議民主主義の思想に比べてより現実的な方法論かもしれない。

2014年度の活動

(※東大GSDMイニシアティブ「未来社会に向けた変革の方法論としてのトランジション・マネジメントの検討と試行」として活動)

「トランジション・マネジメント」実務家向けセミナー

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2015年2月18日午前10時~午後5時に、トランジション・マネジメントを日本で実践するために必要となる実務家(ファシリテーター、行政職員、コンサルタント、シンクタンク職員など)の能力開発を目的に、実務家を対象としたセミナーを東京大学本郷キャンパス山上会館で開催した。セミナーの講師は、エラスムス大学(オランダ・ロッテルダム)トランジション研究所の所長、ダーク・ローバック教授Derk Loorbachと研究員、ニキ・フランチェスカキ准教授Niki Frantzeskakiにお願いし、松浦は適宜、同時通訳、解説を加えた。

当日は、トランジションに関する理論の講義の後、参加者は医療、エネルギー、資源管理の3グループにわかれ、問題の構造化、望ましい未来、道筋と社会実験という3段階で、トランジション・マネジメントのプロセスを実体験した。プロセスの説明を省いていきなり演習を始めたため、特に専門性が高い参加者からは疑問が多く出されたが、その後、講師からトランジション・マネジメントのプロセスについて解説が行われ、参加者の疑問を解消する対応がとられた。

多様なバックグラウンドからなる参加者の交流を通じて、トランジション・マネジメントの社会実装に向けたコミュニティ形成の端緒についたのではないかと思われる。特に、フロントランナーに注目したプロセスは、問題解決や合意形成を志向した従来の取り組みと一線を画す点が評価されたと思われる。

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トランジション・マネジメント教科書の翻訳

エラスムス大学DRIFTの許諾を得て、トランジション・マネジメントに関する教科書「都市のトランジション・マネジメント:都市におけるトランジション・マネジメントの理論と実践の読本(URBAN TRANSITION MANAGEMENT: A reader on the theory and practice of Transition Management in cities)」を日本語に翻訳した。理論的背景から実践の方法論まで、トランジション・マネジメントの理解と実践に必要な情報が詰め込まれている。なお、翻訳を省略した第4章以降は個別事例の紹介となっている。

表紙~第3章一括ダウンロード

○第1章 都市とその課題の理解
○第2章 サステナビリティ・トランジションの考え方の導入
○第3章 トランジション・マネジメント: 都市デザインの基本原理と適用

トランジション・マネジメントの実践:大学教育のトランジション

実践的に理解するとともに、身近な問題解決に役立てるため、トランジション・マネジメントのプロセスにしたがって、持続可能な大学教育に向けたトランジションを検討している。フロントランナーの学内若手教員有志にご協力いただき、トランジション・ビジョン、トランジション実験の検討を通じたトランジション・アリーナの形成を試みている。