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Column #7: 交渉学の教授法

「アメリカではこんなふうに教えている」みたいな話がいろいろ出回っていると思いますが、交渉学を教えるということは極めて難しいことです。交渉学といっても、初歩はきわめて単純な「信条」的な話題が多く、いったいどこが学問なのだかわかりずらいので、教える側としては講師としての権威をどう位置づけるかが悩みどころです。

また、教える内容にもよりますが、交渉学のうわべだけナゾってきた講師だと少しひねった質問に対してきわめて陳腐な回答をすることになります。背景にある経済取引・戦略の概念がわかってないと、議論が空回りすることになります。

さて、具体的にどうやって教えているかということですが、まず当然の「講義」があります。これは世界共通です。板書もあります。

次に「ディスカッション」があります。これは日本と大きく違う点です。生徒は与えられたリーディング(読書課題)を読んだ上で、事前に相当の予習をしていることがこちらでは当然となっています。講師はトピックについてネタを振り、生徒に質問を投げかけ、生徒から特に興味のある点、わかりにくい点について質問を受けるという双方向型の授業になります。これは交渉学だけでなく、学部上級〜大学院レベルではごく一般的なスタイルです。

最後に「シミュレーション」があります。これは仮想的な役割を生徒に振って、生徒同士で交渉をさせるというものです。事前にいかによいシナリオをシミュレーションに組み込んでおくかが、この教育法の肝です。また、仮想交渉を終えた後で、講師主導でディスカッションを必ずします(デブリーフィング)が、これも講師がいかにシミュレーションを理解しているか、応用理論を理解しているかが鍵になります。シミュレーションですから、どんな結果になるかわかりません。予期しないような結果になったとしても、講師は上手に狙ったテーマを教えていかねばなりません。

このように交渉学の教授は極めて難しく、事前の準備次第で有益無益が明確に分かれます。

交渉は経験だけでなく、体系的に学ぶことで少しでも改善するはずです。ですから、経験にのみ依存するような交渉術を教えるような講義は極めて危険です。「学」として教える以上、時間と費用の中で、体系的に何をどう教えるか、教わる側は何を体系的に学べるのかを吟味したうえで交渉学に関する教育を選択すべきでしょう。

ハーバード大学のProgram on NegotiationやConsensus Building Instituteでは、長年の経験に基づき教育を行っており、私もここの授業を1996年から受けてきました。日本でこちらの経験をもとに授業をしたことは何度もありますが、こちらで再訓練を受けるとまだまだ未熟だったなぁと痛感します。こちらでの講義にご興味があれば私やPONまでお問い合わせください。