2017年6月24日
魚釣りに行くと、巷では聞いたことがないコンビニを見かけることがあります。その名は「ポートストア(Port Store)」。東京だと若洲、横浜だと本牧の釣り場に行く途中にあります。
しかし外見はよく見ると「サンクス」風。しかも中に入って売ってるものはファミマのものばかり(サンクス合併したので)。どういうことでしょうか?
実はポートストアが立地しているのはすべて、「臨港地区」と呼ばれる区域内にあります。臨港地区は、都市計画法に基づき指定される地域地区の一種で「港湾を管理運営するため定める地区」(第9条22項)とされています。臨港地区内は港湾法第39条で定められた9種類のなかから分区(用途地域のようなもの)を指定することができ、各分区の目的に合致する範囲内でのみ、建築や事業が認められています。
臨港地区はあくまで港湾を管理運営するための地区ですので、一般市民向けの事業を行うことは基本的にはあり得ません。横浜の多くの埠頭が立ち入り禁止になっているように、一般市民が入ってこないことが大前提です。しかしS48年の港湾法改正で「その景観を整備するとともに、港湾関係者の厚生の増進を図ることを目的とする区域」として「修景厚生港区」という分区が設けられました。この分区指定であれば、公園などの整備が可能となります。たとえば、本牧埠頭や大黒埠頭の海釣り公園は「修景厚生港区」に指定されています(横浜港の分区指定図)。
臨港地区内には食堂や売店などもありますが、やはり建前上は港湾で働く人たちの施設ということになります。実は港湾労働者向けの住宅も立地していて「港湾住宅」などと呼ばれます。これらの施設を運営してきたのが、横浜港の場合は 一般社団法人 横浜港湾福利厚生協会、東京港の場合は一般社団法人 東京港湾福利厚生協会という組織です。あくまで港湾の管理運営に資するという法の縛りを満足させるためには、こういう組織を一枚噛ます必要があったんでしょうね。
で、冒頭のポートストアはこれらの協会が営業している「売店」なのです。若洲のポートストアも正式には東京港湾福利厚生協会の「若洲サービスセンター売店」となります。で、建前上、あくまで港湾で働く人たちのための売店であって、一般市民ためのものではないわけです。もちろん、私たち釣り人などが目にするポートストアがあるのは立入禁止のエリアではないので、現実には誰でも入店して買い物ができるわけですが、あくまで建前上はダメなんですね。ちなみに横浜港の場合、私たちが立ち入ることができない埠頭エリアにもいくつかポートストアがあるみたいですね。
だからといって、別にサンクスのままでいいんじゃないか?とは思うわけですが・・・ここからは推測ですが、サンクスのままだと他の一般市民向けの店舗と同一視されて上記の「港湾のため」という建前が成立しなくなるから、敢えて店名を替えてるんじゃないかなぁ・・・と思います。とはいえ、神戸港や千葉港などでは、ローソンとかファミマとかの名称で臨港地区内に出店できているようなので、東京港と横浜港には何か歴史的文化的な背景もあるんでしょうね。
実は、僕たち一般市民が買い物や遊びに行く「みなとみらい」地区も半分くらいが臨港地区指定がかかってるんですよね。横浜市の臨港地区の分区指定図をみると、法規制と現実の辻褄あわせのため、いろいろな工夫が見られますよ。この件についてはまた今度。
追記:1枚目の写真、よく見たら入口に「Welcome to Family Mart!」なんてバナーが掲げられてるwww。
2017年3月22日
自宅はいわゆる新興住宅街にあるのですが、近所を見回してみると、僕と同世代か、少し若いくらいの子持ち世帯が、数多く転入してきています。愚息の通う小学校も教室不足になり、プレハブの仮校舎を増設するほど。
しかしまた同時に、市内には最近、廃校になった小学校もあります。その小学校が存在する地区も、似たような住宅街ではあるのですが、建ち並んでいる住宅のデザインをぱっと見た感じ、1970年代から80年代に造成された地区ではないかと思います。
この2つの地区を対比してみると、郊外の住宅地開発のライフサイクルみたいなものが、なんとなく見えてきます。
区画整理などで住宅地が「生」まれると、良好な子育て環境を求めて、30代の若夫婦が殺到します。その後20年ほどして、子供たちが巣立っていくと、残されるのは高齢者たち。30代の若夫婦が2世帯居住できるような土地を買えているはずもないので、結局、100平米強の土地に建つ、築30年くらいの戸建て住宅に、高齢者夫婦がポツンと暮らすことになる。定年を迎えた人々は、東京への通勤から解放され、手持ち無沙汰で街をウロウロしはじめる。そして高齢者がらみの活動が増えると同時に、トラブルも増える。さらに20年ほどすると、亡くなる人や老人ホームへ移る人も増え、単独世帯や空き家が増加する。その空いた土地に若い世代が転入してくればよいのでしょうが、高齢者だらけの街は、新興住宅街に比べて自由がなさそうで、魅力がない。40年前には新築だった地域の小学校だって、老朽化著しく、廃校になってしまっているかも。こうして、住宅地が「死」を迎えるのかもしれません。
もちろん、現実には、いわゆるド田舎の限界集落だってそう簡単には消滅しないように、街が「死」を迎えることは、まず、ないでしょう。「リノベーションまちづくり」と称し、このように衰弱した街を生き返らせようとする取り組みも、最近増えています。高齢者がお互いを支えあいつつ、若者をなんとか呼び込もうとする取り組みも、かなり増えているのではないかと思います。
とはいえ今後、確実に人口減少が進むなか、需給バランスを考えれば、衰弱しきった住宅街が増えていくのは必然でしょう。いまだに区画整理で新興住宅街が整備されているわけですから、郊外の住宅街は、リノベーションしたとしてもかなり不利な立場にあります。
結局、30代のファミリー世帯を一気に呼び込む郊外型の住宅地開発は、そもそも持続可能ではないのでしょう。逆に考えると、住宅地をゼロから開発するのであれば、人口の出入りを将来にわたって安定させる仕掛けが重要なのではないかと思います。需要の大きい30代向けのありがちな戸建住宅ばかり整備するのではなく、子育てを終えた50代後半以降のシニア層を呼び込める住宅、後期高齢者向けのサービスホーム、20代の若者向けの賃貸住宅・・・などなど、多種多様な層を呼び込む住宅地開発、要はある意味、”mixed development”が、住宅地の持続可能性を担保する上で、重要なのではないかと思います。当たり前といえば当たり前の結論ですが、住都公団による計画的大規模開発が最早あり得ない現在、そのような理想を実現する術はなく、結果として、30代向けの戸建住宅ミニ開発が横行するのが哀しい均衡解なのではないかとも思います。
残念ながら、30代のファミリー層向け新興住宅街が、自動車や家電といった耐久消費財のように生産され、消費されていくプロセスは、今後しばらくの間は続くのではないかと思います。このように「生」から「死」へと、いつかは「廃棄」される運命にある街を、いかに「リサイクル」するのか、いまから考えておくことが必要なのではないかと思う次第です。
2017年3月3日
2月中旬にオランダでトランジション・マネジメントに関する事例調査を行ってきました。この調査、自転車の通行に関する科研費研究の一環で行ったのですが、オランダということで、結果として、自転車に関連する事例がたくさん集まりました。写真をたくさん撮ってきましたので、以下アップロードしておきます(無断転載はご遠慮くださいマシマシ)。
ユトレヒト駅前。オランダは従来、駅前の道路が自転車で溢れかえっていましたが、駐輪禁止となったと同時に大規模な駐輪場整備が進められています。
駐輪禁止の看板
運河沿いの柵に自転車を括りつけるのがオランダの習慣ですが、この地区は駐輪禁止となり見事に自転車の括りつけがなくなっています。
公共駐車場を潰して自転車駐輪場に変更したそうです。
右側通行の厳守は言うまでもないですね・・・逆送する自転車は1台しか見ませんでした。写真右上に映りこんでいるのは駐輪場の空き台数表示板です。
ユトレヒト旧市役所地下の駐輪場。電気自転車充電サービス、乳母車貸し出しサービスがあります。上の写真は、駐輪場の空・満を監視するカメラで、駐輪台にセンサーを設置するのではなく、天井に設置したカメラの画像自動解析で駐輪台数を捕捉しています。
自転車優先道路。この車道では自動車は自転車を追い越してはいけません。
ハウテン市。自転車を中心に設計されたニュータウンで自転車道のネットワークが張り巡らされ、自動車交通は町を取り囲む環状道路でバリアされています。上の写真のガラス貼りの構造物が国鉄駅で、基本、自転車でアクセスです(高架駅の下が駐輪場です)。
ロッテルダムの自転車用信号。青・赤の残り時間が表示されます。ここにしか存在しないようなことを聞きました(真偽不明)。