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2022年9月6日

洋上風力立地、なぜあたりまえの挨拶ができないのか?

東日本大震災の前から洋上風力発電の立地に興味があって、研究というか、ただの興味というか、初期の事例を10年以上、つぶさに観察させていただく機会を得てきました。

なかなか「論文」にならんので、科研費の報告書に小品を提出するくらいしかできてない自分が情けないわけですが…
https://www.mmatsuura.com/research/offshore-wind.html

初期の事例って、実証事業ということで、民間企業の担当者も半ば研究者のようなタイプの人が多く、ガツガツしてないわけです。ということで、可能性がありそうな地域に話にいくときも、金儲けのことはあまり考えてなくて、「まずはこの海で風車をやらせてもらえませんか?一緒にやりませんか?」、というご挨拶から始まってたんですね。まずは調査をさせていただくということで、どんな漁業をどんなところでやっているのかなどを、丁寧に話を聞いたうえで、そこから風車を建てるかどうか、建てるならどこに建てさせてもらうかをご相談しましょう、という話になるわけです。地元が絶対NOであれば、別の場所に移ればよいわけですし。

先日、青森の洋上風力の話で日経新聞の取材を受けたのですが、どうやら県庁が、予定地の目の前にある漁協の了解を取ったものの、離れたところにある漁協に話をせずに「協議会」などという組織を立ち上げてしまったものだから、トラブっているようなんですよね。

「どうしてひとこと、話を通しておかないのかなぁ?」と、とても不思議な気分になるわけです。忙しくてそこまで手が回らなかった、というの言い訳も理解できなくはないですが、最初に一度話をしておけば、あとはスムーズに進むことも多いので、とりあえず水産課、試験場、県漁連などを通じて調査して、ご挨拶しておけばよいだけのことなのですが。水産資源って、沖に行けば行くほど、誰が漁獲しているかわからなくなるし、さらに魚は回遊するので、漁場ではない場所だって産卵の場所かもしれず、よくよく調べてから話を進めないといけないので。

国のガイドラインとやらには、「協議会」を立ち上げてといったことが書いてあるわけですが、きちんとステークホルダーを探索するという、あたりまえのことは書いてないのかもしれませんね。ガイドラインの策定に自分は全く関わってないので、知らんけど、ってやつですが。


カテゴリ: Environmental policy,Marine policy — Masa @ 11:39 AM

 

2017年7月20日

対馬の夏ポテト

今年も「夏ポテト」が販売されていますね。

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対馬の浜御塩「味」となっていますが、食塩のうち60%ほどが対馬の塩ということ。

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この浜御塩ですが、白松という会社が対馬で製造しているものなんですね。

浜御塩には2種類あるようで、「浜御塩えこそると」という種類のほうは、木質バイオマスを使って製塩しているのが特徴です。石油や電機ではなく、間伐材を細かく裁断したものを燃やして、海水を蒸発させて製塩しているんですね。

たしか以前、夏ポテトが「えこそると」を使ってた頃は、パッケージに木質バイオマスの説明も書いてあったんですが、ここ数年、バイオマスのことが記載されなくなってしまいました。重油ボイラの塩を使うようになってしまったのでしょうか。確かに全国に流通する商品の食塩の製造を100%対馬の木質バイオマスで賄うのは無理かもしれませんが、少しでも「えこそると」を混ぜて、そのことを商品に記載したら、カルビー社のCSRブランディングとしてもメリットがあることなんじゃないかと思うのですが・・・。


カテゴリ: Environmental policy,Food,Marine policy — Masa @ 8:15 AM

 

2017年6月24日

「ポートストア」から見えてくる臨港地区のふしぎ

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魚釣りに行くと、巷では聞いたことがないコンビニを見かけることがあります。その名は「ポートストア(Port Store)」。東京だと若洲、横浜だと本牧の釣り場に行く途中にあります。

しかし外見はよく見ると「サンクス」風。しかも中に入って売ってるものはファミマのものばかり(サンクス合併したので)。どういうことでしょうか?

実はポートストアが立地しているのはすべて、「臨港地区」と呼ばれる区域内にあります。臨港地区は、都市計画法に基づき指定される地域地区の一種で「港湾を管理運営するため定める地区」(第9条22項)とされています。臨港地区内は港湾法第39条で定められた9種類のなかから分区(用途地域のようなもの)を指定することができ、各分区の目的に合致する範囲内でのみ、建築や事業が認められています。

臨港地区はあくまで港湾を管理運営するための地区ですので、一般市民向けの事業を行うことは基本的にはあり得ません。横浜の多くの埠頭が立ち入り禁止になっているように、一般市民が入ってこないことが大前提です。しかしS48年の港湾法改正で「その景観を整備するとともに、港湾関係者の厚生の増進を図ることを目的とする区域」として「修景厚生港区」という分区が設けられました。この分区指定であれば、公園などの整備が可能となります。たとえば、本牧埠頭や大黒埠頭の海釣り公園は「修景厚生港区」に指定されています(横浜港の分区指定図)。

臨港地区内には食堂や売店などもありますが、やはり建前上は港湾で働く人たちの施設ということになります。実は港湾労働者向けの住宅も立地していて「港湾住宅」などと呼ばれます。これらの施設を運営してきたのが、横浜港の場合は 一般社団法人 横浜港湾福利厚生協会、東京港の場合は一般社団法人 東京港湾福利厚生協会という組織です。あくまで港湾の管理運営に資するという法の縛りを満足させるためには、こういう組織を一枚噛ます必要があったんでしょうね。

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で、冒頭のポートストアはこれらの協会が営業している「売店」なのです。若洲のポートストアも正式には東京港湾福利厚生協会の「若洲サービスセンター売店」となります。で、建前上、あくまで港湾で働く人たちのための売店であって、一般市民ためのものではないわけです。もちろん、私たち釣り人などが目にするポートストアがあるのは立入禁止のエリアではないので、現実には誰でも入店して買い物ができるわけですが、あくまで建前上はダメなんですね。ちなみに横浜港の場合、私たちが立ち入ることができない埠頭エリアにもいくつかポートストアがあるみたいですね。

だからといって、別にサンクスのままでいいんじゃないか?とは思うわけですが・・・ここからは推測ですが、サンクスのままだと他の一般市民向けの店舗と同一視されて上記の「港湾のため」という建前が成立しなくなるから、敢えて店名を替えてるんじゃないかなぁ・・・と思います。とはいえ、神戸港や千葉港などでは、ローソンとかファミマとかの名称で臨港地区内に出店できているようなので、東京港と横浜港には何か歴史的文化的な背景もあるんでしょうね。

実は、僕たち一般市民が買い物や遊びに行く「みなとみらい」地区も半分くらいが臨港地区指定がかかってるんですよね。横浜市の臨港地区の分区指定図をみると、法規制と現実の辻褄あわせのため、いろいろな工夫が見られますよ。この件についてはまた今度。

追記:1枚目の写真、よく見たら入口に「Welcome to Family Mart!」なんてバナーが掲げられてるwww。


カテゴリ: Environmental policy,Fish,Marine policy,Urban planning — Masa @ 3:48 PM