2024年9月16日
さる9月14日(土)に、関西大学で開催の「環境経済・政策学会」の2024年大会に伺ってきました。
自分はいちお共著で、かなりガチで発表内容や原稿に手を加えたのですが、筆頭・発表はうちの研究室のナランさんで、母国のカンボジアで聞き取り調査した結果の発表。
何がおもしろいかって、多国籍企業が途上国の環境に「よい影響」を与えている事実の発見。多国籍企業ってたいがい、ボパールの大事故のイメージが強いせいか、途上国で「悪いこと」をしてるという見方をされがちなわけです。最近ではスウェットショップとか。
しかし今回の調査で、カンボジアでグリーン建築(環境にやさしいビル・工場など)を建てた事業者(※LEED認証)はすべて実質的に多国籍企業の現地法人で、グローバル本社の意向や海外のクライアント(ハイエンドブランド)の意向が理由で、追加費用がかかるにもかかわらず、カンボジアで太陽光発電を利用したり、汚水排出が少なかったり、断熱性能が高かったり、そういう建物を敢えて建築していたんですね。やはりカンボジアの地元の企業だと、そこまでやろうという資本力もないし、気力も出ないのでしょう。
現時点で6社しか存在しないのでその影響は限られますが、彼らがトランジション・マネジメントの理論における「フロントランナー」となって、グリーン建築を拡大波及するポテンシャルは高いと思います。
ナランさんは実はカンボジア政府の環境省の職員で、今月帰国するので、今回の知見をもとに、フロントランナーからの拡大波及に勤しんでもらえれば・・・と期待しています。
その後、EV普及について、経産省・環境省やメーカーが登壇するパネルディスカッションを拝聴したのですが・・・やっぱ経産省というか日本の産業政策はダメだわ・・・と確信を強めました。
2024年6月8日
北軽井沢って、てっきり軽井沢町のなかにあるもんだと思ってたのですが、県境も超えて群馬県長野原町に存在するんですね。で、いろいろ調べてみると興味深い場所なので、実際に行ってみました。
はるか昔は草津温泉の交通の便が悪くて、なんと軽井沢から軽便鉄道が伸びていたそうです。大正時代に、この鉄道沿線に法政大の学長が別荘を構えたところ、お気に入りになったそうで、学長の意志で法政大教職員限定の別荘地「大学村」を開墾して分譲されたそう。そしてその最寄りの地蔵川停留所に駅舎を建てて寄付して「北軽井沢駅」にアップグレードしたそうな。
この軽便鉄道は昭和30年代に廃止されたそうですが、いまでもバスやお土産屋さんなどに「草軽交通」の名前が残っていました。で、北軽井沢駅の駅舎は保存されているので見ることができるのですが…
駅舎には「H」の文字がデザインに取り入れられていて、ここが法政大のショバだったことがよくわかります。
またこの周囲はいまだに「大学村」と呼ばれているようで、自治会も「大学村組合」みたい。
とはいえ戦前の開発ですし、もはやいろんな人たちに土地は譲渡されたのでしょうか、パッと見た感じ、駅舎以外には法政大の影響はあまり感じませんでした。
とはいえ、大学教員たちが避暑地で読書するために別荘地を開墾・分譲しちゃうなんて、とんでもなくロマンチックな歴史のように感じます。
平成以降は「若手研究者の苦労」だの「日本の論文生産力の低下」だの、昨日は国大協が法人の窮状を訴えて記者会見だのと、大学界隈では世知辛い話ばっかし聞かされますが、学長が知の涵養のために別荘地を開墾してしまう大正・昭和初期って、ロマンチックが止まらないなぁ…と北軽井沢の地でしみじみとしました。
2024年4月1日
また読書メモです。今回はこちら。
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NECの今岡さんたちのチームによる「デジタルエシックスコンパス」の概念と実践の紹介。さすがビジネス書だけあって、とても読みやすいです。電車の車内などでパラパラと一気に通読できます。
実は今岡さんが拙著「トランジション」をお読みいただき、本書が掲げるデジタルエシックス概念の導入に向けた変革のひとつの方法論としてトランジション・マネジメントを本書内にてご紹介いただいております。そういう経緯もあり、拝読させていただきました。
本書のメインは、デンマークデザインセンター(Danish Design Center)の開発したデジタルエシックスコンパスなるもので、22の着眼点から、いわゆるデジタルな製品、サービス、政策などの開発段階・社会実装前段階でエシックスの観点から評価・フィードバックするためのツールです。これを使ってワークショップなどを行い、技術者、意思決定者、政策担当者などが製品などを改善するそうで、コンサルティングサービスの枠組みとして確立しつつあるように読めました。
国内外のELSI研究に触れられていないのはちょっと残念ではありますが、デンマークにはこんなプロセスが存在して、日本でも企業や行政が利用し始めているよ、ということを知るにはとてもよいと思います(それがNECさんの意図でしょうし)。
それにしても最近、トランジションデザインにせよ、対企業コンサルティングの一環として「ワークショップ」を行うのが増えてきてるんですね。自治体行政のファシリテーションだのワークショップだのを長年やってきたみなさんは、これからけっこう、いいお仕事が転がっているかもしれませんな。自分も民間向けになんかやってみるか・・・。