2025年2月4日
土壇場で撤回というか1ヶ月停止ですか。
トランプ大統領 メキシコ カナダへの関税措置 1か月停止で合意

関税措置は交渉決裂、すなわちBest Alternative to a No Agreement (BATNA)であって、お互い損になるので、実はトランプ大統領も発動したくないはず。
あくまでBATNAを使った脅しということで、カナダ・メキシコができれば逃げたい交渉のテーブルへと彼らを引きずり出してきたといえるでしょう。
まぁよくある戦略といえば戦略なのですが、オオカミ少年と同じで、BATNAを使った脅しを何度も繰り返すと、交渉相手は「実はBATNAを実行することはないんじゃないか?」と思うようになるので、効果はどんどん薄れていくでしょう。
トランプ大統領もバカではないので、だからこそ、どこかの国に対して早い段階でBATNAの実行(関税措置の実行)するでしょうね。それが中華人民共和国になるような気がしなくもなく、そうなると、大国のメンツが絡んで、間に存在する日本は面倒な立場に置かれるかもな・・・という気がしなくもないです。
どうなることやら・・・。
2025年2月2日
ドナルド・トランプが「関税」を武器に、国際交渉を進めているというハナシ。
トランプ大統領 カナダ メキシコ 中国に関税で署名 米メディア | NHK
交渉学の視点で見ると、この関税措置はメチャクチャな戦略ではなく、むしろ米国側が自身のBATNAを顕在化させて、その実行可能性(現実味)を高めているというだけのことかと思います。
逆に言うと、これまでの米国が交渉のなかで、何をBATNAとして相手国に認識させてきたのか、という点は気になります。相手国が米国のBATNAを認識していない(気にしていない)のであれば、米国側の「交渉力」は非常に弱くなるというか、相手国がナメてかかってくるのは当然といえば当然。
なので、トランプ大統領はわかりやすくBATNAを提示しているという見方もあり、それはそれで「優しい」交渉戦略かもしれません。
ただし、高関税⇒貿易を止めるというBATNAを実行する、つまり相互利益のある取引を一時的に中止することで、米国にも相手国にも機会損失が発生するでしょう。そこからいかに迅速に交渉による新しい合意に至れるかが鍵で、このプロセスが遅れれば遅れるほど、両国にとってツラいはずです。なので、相手国側の機会損失が小さければ、ゴネることで持久戦に持ち込み、米国が根負けするのを待つのでしょうが、当然トランプ側もバカではないので、そういう国を相手にこの戦略は使うはずもありません。
まぁ貿易がない原初状態に戻して、そこから取引を再構築するというのも、ゲームコンソールのリセットボタンに慣れた私たちには魅力的なプロセスに見えるのですが、問題は再構築に係る取引費用をどう最小化するのか。そこがトランプ政権あるいは相手国の担当者の腕の見せ所でしょう。
2024年10月23日
10月11日の夕方に徳島に飛んだのですが、その前に午前中、神奈川県の久里浜にある国総研で研修講師をしてきました。

庁舎の隣に大きな病院が新たに建築されていてびっくり。
当初は、大学の同期で国交省の港湾局の官僚をやっていた某君から依頼されて研修講師を引き受けたのですが、彼が異動して偉くなっていった後も、引き続き本省から依頼があるので、毎年担当させていただいております。
さきほど受講者アンケートの結果なるものを頂戴したのですが、「対外交渉が従事している現業務で大きなウエイトを占めていることもあり、立場と理解、代替案の用意と戦略的な使い方について、対外交渉時に必要な技術・ポイントを習得できて有意義であった。」などポジティブなコメントを頂戴できて、気分よいです(笑)。
交渉分析のスキルが身につけば、仕事も家庭も気が楽にはずなので、もっと広まっていけばいいなぁ(しかし研修講師の出張は疲れる(;^_^・・・)と思うところです。ちなみに、明治大学専門職大学院ガバナンス研究科では、日本語でも英語でも交渉分析の講義を提供していますよん。