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2025年5月13日

交渉は結局BATNA次第:米中 追加関税115%引き下げで合意も 今後の協議は不透明

さすがに米国内でも生産活動に悪影響が目立ち始めたのでしょうか、お互いに「抜いた刀を鞘に戻す」合意となりましたね。

中華人民共和国(中国)側は報復関税で売られた喧嘩を買ったわけですが、十二分な規模の国内市場を抱えていて、ロシア、欧州、東南アジアへの輸出も特に心配ない中国にとっては当然の戦略というか、対応だったと言えるでしょう。だって別に米国と取引できなくてもどうにかなるんですもの。

逆に米国は中国から部品等の輸入ができなくなって一部の製造業はパニックになったわけです。もちろん現政権はその脆弱性を解消するために国内での原材料生産を強要しようとしているわけですが、国内生産の基盤ができていない現時点で喧嘩を売っても、そりゃ、相手に足下を見られますわな。

交渉分析では、交渉決裂というか、縁を切った場合に自分に・相手に何ができるか(BATNAという)を想定・分析することが必須となっていて、その視点からすれば、今回は米国側のBATNAのほうが脆弱だったと言えるかもしれません。またそれぞれのBATNAの強弱を考えれば、いつかは米国側が譲歩して合意に至る道筋は見えていたのかもしれません(※ただし冷静さを失って感情的に「間違った」意思決定へと進むことは世の中多々ある)。

そういう意味では日本は非常に脆弱な立場にあって、輸出入の問題だけでなく、安保の問題があるので、米国と縁を切るというのはなかなかオオゴトなわけです。対米輸出依存度がもっと大きい東南アジア諸国も交渉をする前から譲歩の姿勢を見せていましたね。

なのでいわゆるトランプ型の交渉戦略がこのまま続けば、最終的に、ロシアにせよ中国にせよ、自国内で諸々完結できる大国の地位が相対的に強くなって、自由貿易でこれまで成長してきた小国の地位は今後衰えていくことになるかもしれませんね。

そういう意味で、日本政府はいかに対米交渉へのBATNAを強化するのか・・・経済だけであれば手の打ちようがあるのでしょうが、安保条約や原子力協定なども絡んでくるので、本当、ややこしいですな。「戦後のツケ」が今頃になって債権回収されようとしているのかもしれません。くわばら、くわばら。


カテゴリ: American politics,Negotiation — Masa @ 7:52 AM