ホーム » ブログ

アーカイブ

検索


フィード


管理

2021年9月14日

1+1=2に潜むエネルギー政策の問題

お金って、たとえば1円玉と10円玉を一枚ずつ出せば、11円として受け取ってもらえますよね。硬貨も紙幣も、基本的には1円は1円として無差別に扱うのが一般的なルールです。

同じようなルールが、エネルギー政策や気候変動政策にも、適用されているような気がしなくもないです。1kWhと1kWhを足せば2kWhだし、1トンのCO2と1トンのCO2を合わせれば2トンのCO2。もちろん電気は貯蔵が難しいので、その時その時の需要に合わせて発電しないといけませんが、ある時点で需要と供給が一致するように、需要の足し算と供給の足し算の帳尻が合えばそれでよいのでしょう。

じゃぁ、人口問題はどうでしょう?1人と1人を足せば2人です。ってことは人間も、電力やCO2と同じく、カウントして、帳尻合わせできるものでしょうか?

人間って一人一人、かなり違った存在ですよね。1人足らなければ、1人増やせばいいとは限りません。引っ越し屋さんで1人不足だからといって、90歳の爺さんを1人連れてきても、問題は解決しないでしょう。

何を言いたいかというと、人間の場合、ひとりひとりに特徴があるので、「数」を揃えるだけではあまり意味がないかもしれないということです。

じゃぁ電力やCO2はどうかといえば…たとえば、自宅のコンセントで1kWh使ったとき、その1kWhがどこでつくられて、どうやって運ばれてきた電力なのか、大多数の人は意識しないでしょう。きちんと電子レンジを動かしたり、エアコンを動かしさえしてくれれば、1kWhはどんな1kWhであったとしても、実用的には、気にならないわけです。CO2もまたしかり。温室効果を減らしたければ、誰のどんな活動でもいいから、CO2の排出を減らせばいいわけです。

しかしそれって本当かなぁ?と思うところもあります。1kWhが、どこの原子力発電所でつくられたものか、どこの風力発電所でつくられたものか、末端の消費者は知る由もありません(最近はある程度選択できますが)。それでいいのかな、と気になるわけです。いまの社会のシステム、あるいはエネルギー政策も、「気にしない」ことを暗黙の前提として、形作られています。強いていえば、その1kWhを作る費用を最小化することが「正義」のように押し付けられています。

お金だって実は、同じ問題を孕んでいます。どんな1円でも1円であることが、お金の美しさでもあります。しかし最近では、マネーロンダリングの禁止のように、お金の出どころについて気にするようになってきました。目の前に1万円札があるからといって飛びついてはダメで、その出どころを気にしないといけない時代になってきています。

ということで、エネルギー政策でも、気候変動政策でも、あるいはもっと全般的な政策でも、1kWhとか、1t-CO2eqとか、さらには1円とかも、それぞれの「1」に付随する意味を、もう少し考えないといけないのだろうな…そしてそれぞれの「1」に付随する意味を記録する制度がこれから必要になってくるんだろうな…なんて思っています。まぁそれこそブロックチェインってやつなんでしょうが。


カテゴリ: Environmental policy — Masa @ 1:58 PM

 

2019年9月29日

「地下水マネジメントの手順書」が公表されました

一昨年度、昨年度と委員として関わらせていただいた「地下水マネジメント」の検討成果が、「地下水マネジメントの手順書」として内閣官房水循環政策本部より公表されました。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/mizu_junkan/tikasui_management/tejunsho.html
名称未設定 1

地下水の利用って高度経済成長の頃は、工業利用で汲み上げすぎて地盤沈下を引き起こすというパターンが多かったようですが、さすがにそういうことはずいぶん減ってきたようです。しかし最近はペットボトルの水がよく売れるようになって、飲料を生産するために汲み上げるニーズが増えてきたようで、しかも上流のほうで汲み上げるものですから、下流のほうで地下水が涸れるんじゃないかという懸念もあるわけです。さらに環境管理という面でも、水循環を持続可能にすることは当然必要ですよね。

ということで、地下水のマネジメントをしないといけなくなってきているのですが、権利関係なども歴史的経緯があって複雑なため、ステークホルダーがうまいことやっていくためのガバナンスが重要になります。合意形成というやつですね。なのでワタクシが召喚されました。

結局、自治体レベルで動いてもらわないといけない(全国レベルで管理することではない)ので、こんな手順書というものを国が用意して、最終的には自治体がこれを参考にマネジメントを進めてもらうことを期待しています。目立った補助金がついてくるわけではないのですが、地下水の問題を抱えている、抱えていそうな自治体の職員・議員さんはぜひ参考にしてみてください。

そういえば5年ほど前に調査した福井県小浜市の地下水、最近はどんな感じかな?

IMG_8973


カテゴリ: Consensus Building,Environmental policy,Public policy — Masa @ 10:52 AM

 

2018年8月26日

飛島村の都市計画はおもしろい

日本一カネ持ちの村として知られる愛知県の飛島村。名古屋にも程近いため郊外住宅地開発が進みそうなものですが、村のほぼ全域が市街化調整区域なので都市開発ができないとのこと。

この記事をみると、「市街化区域はわずか8.66平方キロメートルしかなく、残りは全て市街化調整区域(13.87平方キロメートル)」とあるのですが、村の面積の1/3以上が市街化区域なら条件は悪くないのでは?不思議に思ったので、村のホームページで都市計画図を見てみました。

sokatuzu30-5

この都市計画図、近隣の自治体も含まれるのでわかりずらいですが、飛島村の市街化区域ってそのすべてが工業系の用途指定なんですね!それじゃぁ住宅地開発ができるはずあるまい(笑)。

で、さらによく見ると、飛島村中心部に小さいながらも地区計画の指定があります。市街化調整区域内の地区計画っていう、日本の都市計画制度が孕む矛盾を象徴するような制度ですね。渚地区、とのことで、google mapで見てみると・・・

なんでこんな場所が地区計画指定されてるんだろう・・・とさらに検索してみると、こんなのが見つかりました!

飛島村に誕生!│渚地区 住宅地(PDF直リン注意)

村自身が分譲住宅地の整備を始めたみたいです。そのための地区計画指定だったんですね。ネット上の記事なんか読むと、村役場は人口減少を危惧しているようで、その対策の一環なんでしょう。

とはいえハザードマップ(画質の粗さがなんとも・・・)を見ると、村のほとんどが、想定浸水深が2m超になってますね。コンパクトシティみたいなハナシを念頭に置くと、そもそも論として、こういう地域に人が居住するってどういうことなんだろう・・・と複雑な気分になります。


カテゴリ: Environmental policy,Public policy,Urban planning — Masa @ 8:50 AM