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2025年5月17日

追浜工場閉鎖に思うトランジションの意味

たまげました。

日産が神奈川の追浜と湘南の2工場閉鎖へ…世界7工場削減計画、海外はメキシコや南アフリカなど

日本各地で自動車産業に限らず大規模な工場やプラントの閉鎖が続いているとは思いますが、自分としては「追浜工場の閉鎖」ほどビックリなニュースは初めての経験に思います。

自分は横浜市金沢区で幼少~青年期を過ごしたのですが、日産の追浜工場というのはやはり地域において大きな存在だったわけです。工場がなくなってしまうと、周辺にたくさんある下請け業者や工場も影響を受けるでしょうし、追浜駅前の飲食店も影響を受けるでしょうし、工場や下請けに勤めている人の家族に関連する産業(不動産、小売など)も影響を受けるでしょうし・・・その他諸々の仕事が追浜のあたりから一気に消えてしまうように思えてきます。当然、自分の小学校の社会科見学は追浜工場でした。それくらい「追浜」イコール「日産の工場」のイメージが強いですし、実際そうなんじゃないかなと思います。


(遊漁船からみた追浜工場)

金沢区は船宿も多いので、いまだに自分は野島のあたりへ行くことも多いのですが、早朝に行くと、新車満載のキャリアカーが夕照橋を行ったり来たりするのが日常の光景だったのですが、あれがすべていなくなってしまうのかと想像すると、「ぽっかりと穴が開く」感じなんだろうなと、戦慄を覚えます。

日本の自動車産業は、電動化へのトランジションに抗っていたら今後凋落するのは理論的に必至かとは思います(しかし比較的前向きだった日産が最初に不調をきたすのは残念)。トランジションは旧来産業の崩壊が不可避のため混乱は致し方ないのですが、自分がよく知っている街が影響を受けるとなると、なんだか、心が揺らぎます。だからこそ、旧来産業から未来の産業へのトランジションの円滑化(雇用対策など)がダイジなのですが、現実は、こういう感じで、現場での影響は突然あらわれて、混乱するものなのかもしれません。だからといって、世界規模で気候変動対策のトランジションを止めるわけにはいかないので・・・悩ましいです。

先月の報道ではEVの生産を追浜から栃木工場に移管することにした(日産、栃木でEV「リーフ」を生産 追浜工場から移管)ようですし、それを前提にした追浜工場の閉鎖なのかな、とも思います。逆に栃木工場(とその周辺)は今後も安泰なのでしょう。

まぁ、諸行無常、というところなのでしょうか・・・。


カテゴリ: Automobile,Public policy,Yokohama — Masa @ 8:15 AM

 

2025年5月14日

2025年度のIPPコース(留学生)ゼミ

2025年度春学期の留学生ゼミは、今秋修了予定の2年生2名と昨秋入学の1年生2名を指導しています。

なぜか1年生は都市・環境に関心が高い留学生が多くて、自分の担当も、公共政策大学院なのにかなりガチで都市計画(土木計画)寄りのテーマ。

ひとりはパキスタン政府職員で、ラホールのウォーカビリティというかジェイン・ジェイコブズ的都市デザインの可能性を探っています。とりあえずStreet Fightとか読んでもらって最近のトレンドを学習中。

もう一人はブータン政府職員で、交通安全がテーマ。日本と真逆で、モータリゼーションがゆえに交通事故がけっこう増えているそうで、その対策について研究中。ちっちゃい国なので、そもそも交通事故の統計分析が政府内でもぜんぜん行われておらず、事故の記録からあたって、事故原因の傾向をまずは調査中。ここでは書けませんが、交通事故の最大の原因は日本人からすると、とんでもない理由でした。

まぁそんなこんなでアジア諸国のおもしろい現場をのぞき見させてもらっています。


カテゴリ: Meiji University,Urban planning — Masa @ 8:13 PM

 

2025年5月13日

交渉は結局BATNA次第:米中 追加関税115%引き下げで合意も 今後の協議は不透明

さすがに米国内でも生産活動に悪影響が目立ち始めたのでしょうか、お互いに「抜いた刀を鞘に戻す」合意となりましたね。

中華人民共和国(中国)側は報復関税で売られた喧嘩を買ったわけですが、十二分な規模の国内市場を抱えていて、ロシア、欧州、東南アジアへの輸出も特に心配ない中国にとっては当然の戦略というか、対応だったと言えるでしょう。だって別に米国と取引できなくてもどうにかなるんですもの。

逆に米国は中国から部品等の輸入ができなくなって一部の製造業はパニックになったわけです。もちろん現政権はその脆弱性を解消するために国内での原材料生産を強要しようとしているわけですが、国内生産の基盤ができていない現時点で喧嘩を売っても、そりゃ、相手に足下を見られますわな。

交渉分析では、交渉決裂というか、縁を切った場合に自分に・相手に何ができるか(BATNAという)を想定・分析することが必須となっていて、その視点からすれば、今回は米国側のBATNAのほうが脆弱だったと言えるかもしれません。またそれぞれのBATNAの強弱を考えれば、いつかは米国側が譲歩して合意に至る道筋は見えていたのかもしれません(※ただし冷静さを失って感情的に「間違った」意思決定へと進むことは世の中多々ある)。

そういう意味では日本は非常に脆弱な立場にあって、輸出入の問題だけでなく、安保の問題があるので、米国と縁を切るというのはなかなかオオゴトなわけです。対米輸出依存度がもっと大きい東南アジア諸国も交渉をする前から譲歩の姿勢を見せていましたね。

なのでいわゆるトランプ型の交渉戦略がこのまま続けば、最終的に、ロシアにせよ中国にせよ、自国内で諸々完結できる大国の地位が相対的に強くなって、自由貿易でこれまで成長してきた小国の地位は今後衰えていくことになるかもしれませんね。

そういう意味で、日本政府はいかに対米交渉へのBATNAを強化するのか・・・経済だけであれば手の打ちようがあるのでしょうが、安保条約や原子力協定なども絡んでくるので、本当、ややこしいですな。「戦後のツケ」が今頃になって債権回収されようとしているのかもしれません。くわばら、くわばら。


カテゴリ: American politics,Negotiation — Masa @ 7:52 AM