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2013年10月1日

International Conference on Sustainability Science 2013参加

先月の話ですが、ICSSに参加してきました。東大関係者多数ですが、欧州の研究者も多数参加していました。場所はAix-en-Provenceという風光明媚なところにあるAix-Marseille Universiteというところでした。

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相変わらずの弾丸出張で、夜行便で当日朝、パリ経由でマルセイユに着いて、高速バスでエクサンプロヴァンスへ移動、徒歩で会場に向かいました。

で、今回、セッションに参加してみての感想を以下箇条書きで。

・合意形成の問題はsustainability scienceという領域では重要と認識されてはいるものの、具体的な手法や概念についての共通認識ができてない、という共通認識を関係者が持っている様子。ここは重要なポイントで、できるだけholisticな視点で合意形成の問題に取り組んでいただければな・・・というのが私の感想。ある特定の研究者が特定の手法を推してその学術領域でguru化するのはよくある話。sustainability scienceとしてはオープンに社会的合意形成と科学との関係を見ていただきたいし、ここなら、できそうな予感がする。

・交渉(negotiation) vs. 熟議(deliberation)という軸で観察すると、研究者の発表の中にも、neoliberalなガバナンスにおけるnegotiationの行き詰まりに対しての不満を強く感じられた。しかしその対応として、deficit model前提の一般市民への教育、みたいな方向へ傾いているようにも感じたのが少し残念。むしろdeliberativeなガバナンスのあり方を志向していただければいいのな、と思った(そこへの誘導が私の仕事かもしれない)。

・共同事実確認(joint fact-finding)について発表したのですが、背景の問題意識はかなり共有されている模様。科学的情報をいかに社会とつなぐかが重要な課題であることは誰もが認識しているみたいだったけど、そこで「どういう手段があるのか?」という疑問への回答が得られてないようだった(私も正解は知らないけど)。

・Future Earthプロジェクトは、社会・科学の接点を検討する場として、要チェック(住先生よりアドバイス頂戴しました)。

マルセイユは治安が悪いとネットで見聞きしていて、実際ホテルのまわりのスーパーマーケットにも出かけてみたのですが、確かになんか怖いので、ぜんぜん出かけませんでした。ホテルとつながってたモールにhabitatがあったのでちょっと覗いたくらい。翌朝早朝5時半にはチェックアウトしてマルセイユ空港へ。

でも、移動のバスから見上げた空の色は、ほんと綺麗だったなぁ。

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カテゴリ: Public policy,Science/Technology Policy,Travel — Masa @ 6:01 PM

 

2013年9月2日

響灘の洋上風力発電

日本国内の洋上風力発電は、銚子沖(千葉県)と響灘(福岡県北九州市)の2箇所で、1本ずつ風車を立てて実証実験が行われている段階です。欧州では、デンマークのMiddelgrundenのように、かなり前から洋上に風力発電の風車を建てているのですが、日本では漁業や港湾との調整などがイマイチ進まずに現状に至っているところです。

銚子沖は大雪の中、今年2月に見学に出かけましたが、今回、帰省ついでに響灘の風車を眺めに行きました。

北九州は土地勘がまったくないのですが、とりあえず若戸大橋を渡って、海のほうにでると、大きな埋立地があって、そこのあたりを市では響灘と呼んでいるみたいです。国から補助を受けているのでしょう。エコタウンということで、福岡大学の実験施設やら、電気自動車の実証実験サイトなどがありました。さらに、副首相でおなじみの麻生セメントの工場(普通の工場)もあったのはなんか笑ってしまいましたが。

響灘の風車(陸上)

で、埋立地の護岸のところに公園があって、大型の風車が並んでいます。何基か数え忘れましたが、けっこう、壮観です。沿岸の風車でも近寄れないように柵で囲ってあることも多いですが、ここの風車は支柱の根元までかなり近づけます。真上で巨大な風車が、ブゥン、ブゥン、と風きり音を出しながら回転する雄姿は典型的な産業景観と呼べるでしょう。この護岸は地元の人たちの釣り場になっているようで、平日昼間でもけっこう人がいました。

洋上風力ですが、この公園からも遠くに眺めることができました。しかし・・・

響灘の洋上風力発電

視角の問題かもしれませんが、洋上に立っているようには見えない(◎。◎;)

防波堤の向こう側にあるのでしょうか、突堤の先に櫓を立てて風車が立っているように見えます。しかしそれにしても、銚子のときにくらべて、「洋上風力」の風車という感じがしません。

響灘の風力発電(洋上と陸上)

で、事業者の電源開発のホームページを見てみたら、1.4km沖合に立地ということ。それに比べて銚子沖は3.1km沖合なんですよね。構造がずいぶん違いますので一概にどっちがいい、悪いとは言えませんが、見てくれだけで判断したら、銚子沖のほうが圧倒的に洋上風力という感じがします。

 

 


カテゴリ: Environmental policy,Science/Technology Policy — Masa @ 10:00 AM

 

2013年8月24日

ILC立地選定にみる「科学者」の位置づけ

ILC戦略会議という、素粒子の研究者が自主的に組織化した集団が、脊振山地より北上山地のほうが望ましい立地だという意見表明をしたそうですね。で、記事を斜め読みしていたら、こんな記事がありました。

『ILC計画の旗振り役である■■大の■■■准教授は「科学的、学術的観点で決めるべきであり、私たちの評価内容に間違いがない限り、政府にひっくり返されることはない」と自信を見せる・・・』
引用元: 脊振落選、不満タラタラ ILC誘致、第2ラウンドへ 福岡・佐賀 – MSN産経ニュース

もちろんILCを利用する研究者のユーザー視点による評価は重要でしょう。しかし、それが政策判断とイコールであると断言することは、「政策に関する科学者・専門家」としての専門的知見に基づく発言ではなく、「ILCを日本に立地させたい科学者」としてのステークホルダーとしての政治的主張ですよね。

これが政策と科学をつなぐ際に厄介なポイントで、評価内容は「科学的」だけども、それを意思決定に反映してもらおうとすることは「政治的」行為。しかし、両方の活動をおこなう主体は「科学者」という同一人物にならざるを得ないのですね。

この、「科学者」なる同一人物が複数の役割を担わされていることを、情報の受け手である、政府関係者、市民社会、科学者などが意識できるかどうか、が政策と科学をつなぐ上でのキモなのかな、と思います。

 


カテゴリ: Science/Technology Policy — Masa @ 10:32 AM