2017年2月10日
洋上風力発電の地域合意形成についてはMIT在籍中から、かれこれ15年ほど、ウォッチしてきました。うまくいっている事例もあれば、ぜんぜんうまくいかない事例もあります。そんななかでも、特に地域に「愛されている」洋上風車である五島の浮体式洋上風力発電施設について、五島市役所再生可能エネルギー推進室への聞き取り調査とともに、視察してきました。
聞き取り調査などの専門的な内容は論文などに別途まとめるとして、今回は風車のご紹介。風車はこんなふうに、海のまんなかに建っています。
五島の風車は「浮体式」といって、実は足が海底に着いていません。細長い、巨大な電柱みたいな棒が海に浮いていて、流れていかないようにチェーンで碇に係留されています。海上に見える部分は鋼製ですが、海底の大部分はコンクリ製です。要は下水道などで使われる「土管」みたいなものですね。
視察した日は少し曇っていたのですが、逆にちょっと荘厳な雰囲気の写真を撮ることができました。写真の遠くには福江の街も見えます。
以前は椛島という島の沖合いに設置されていたのですが、昨年度末に、現在の福江島崎山沖へと移動したそうです。椛島は小さな離島ですので発電した電力を使い切れない問題があったそうですが、今度は五島列島で一番栄えている福江島の電力線へと接続されているので大丈夫なのでしょう。浮体式はこのように、比較的容易に移動できるというのがメリットかもしれませんね。現在の風車も、撤去せざるを得ない問題が発生したら、そのままどこかへ曳航すればいいわけですものね。
当日は、風車から一番近い崎山地区も訪問しました。上の写真のように、漁港の防波堤の向こうに、風車の翼を見ることができます。
また箕岳という五島らしい丘/山に登ったのですが、そこからは風車の位置関係がよくわかりました。上の写真のように、陸から、あまり離れている感じがしません(近くという感じでもないですが)。近くで漁船が操業しているのも見えました。実はこの風車、海中部分に付着物防止の塗装を敢えてしていないそうで、すでに大量に付着物(海草や貝でしょうか)がついており、そこに魚がたくさん集まってきているそうです。以前は魚が逃げるのではないかとみなさん恐れていましたが、実際に建ててみたらなんのことはない、逆に魚が集まってくることが判ったんですね。
さて、五島島内の移動、今回はレンタカーを利用しました。
見ての通り、電気自動車(三菱のi-MiEV)です。五島では、実は、エビッツ(EV&ITS)事業という名で電気自動車の利用をかなり本気で促進してきました。観光に電気自動車を使ってもらえるよう、EVの充電所もそれなりに整備されています。この事業、東大の生産研の鈴木高宏先生(当時)が長崎県に出向されていた頃に担当されたプロジェクトで、大学の先生が行政職員として現場で技術導入・社会実装したという、地域イノベーションの研究としてもとても興味深い事例なんですね。で、自分は、今回がはじめてのEV体験。最初はエンジン音がしないので非常にまごつきましたが、慣れると、けっこう、おもしろいです。回生ブレーキを効かせていかに航続距離を伸ばせるかという楽しみもありますし。もし五島にいらっしゃる機会があれば、是非EVレンタカー、体験してみてください。僕は「レンタカー椿」さんにお世話になりました。空港から貸し出し場所までの移動の間に、懇切丁寧に運転法を教えていただけます。
2016年8月16日
Boston officers say no to mediation program | Boston Globe
日本と違って警察は市町村や郡の管轄なのが米国。ということでボストン市はボストン警察が所管となります。あと、大学の敷地内は各大学独自の警察の管轄です。
で、ボストンの警察官のちょっとしたいざこざ(言葉遣いが悪いとか乱暴とか)についての市民からのクレームは、時間と手間をかけて法的に処理をするのではなく、非公式な紛争解決手続きで迅速に処理しましょう、ということでメディエーション・プログラムが導入されたそうです。警官と市民とが調停人立会いのもと、直接話し合って解決策を見つけましょう、というプログラム。
しかし、240件のクレームがあるものの、これまでにメディエーションで処理された事例はなんとゼロ件。120件がメディエーションで処理しうると判定されたものの、警察の総務部局がメディエーションに係属した案件は15件。さらに10件は当事者の警官が拒否、残り5件は当事者の警官がまだ同意していないとのこと。
メディエーション(非公式な紛争解決)という以上、当事者間の同意が存在してはじめて成立するわけです。しかし、警察(警官)の側が同意しない以上、プロセスは成立しません。誰が何と言おうと、当事者至上主義なわけです。
任意の紛争解決プロセスを強制しようとすれば論理的に破綻しています。ということは、その「任意のプロセス」を利用したいという動機づけ、信頼感みたいなものが肝心になるわけです。
で、警官が信用しないこのボストン警察のメディエーション・プログラム。なんでかなーといろいろ考えてみたんですが、僕が思うに、このプログラムがハーバード・ロースクールの学生たちが運営するHarvard Mediation Programによって実質的に運営されているからじゃないかな、と思うわけです。いつもダンキンのドーナツとコーヒー飲んで、拳銃持ったギャング相手に命かけてる警官たちが、ハーバードのお坊っちゃまお嬢ちゃまに、モメゴトの調停を依頼するとはとても思えないわけですよ。ハーバード大の所在地であるお上品でリベラルなケンブリッジ市の警察ならまだしも、良くも悪くも人種の坩堝で事件も多いボストンですからね。
記事だけ見ると、ボストン警察の警官は偏狭だ、と感じるような気もするわけですが、任意の紛争解決プロセスは、最後まで任意である以上、誰がそのプロセスの行司をするのか、そして当事者がその行司に委ねる気になれるのか、がゼッタイ的な必要条件である以上、そもそもハーバード・ローの学生連中が仕切るプログラムを設計した時点で失敗が確定していた、という気もします。
2016年6月8日
さきほど、留学生向けのファシリテーション講義で、東京の住みづらいところについて意見集約するという実演をやってみました。
明らかに第一位は「言葉の壁」。学内はともかく、日常生活でかなり困ってるとのこと。自分たちは日本語わからないけど、東京の人たちも英語も母国語も話せない。いろんな説明も日本語だけ。こりゃほんと、困った問題ですね。それに関連して、「人々とのコミュニケーション」も問題のようです。これは言葉だけじゃなくて、気軽に会話できない壁を感じているようです。確かに、日本の人って、見知らぬ人と会話ができないですよね。
他には、高い生活費、生活環境(わかりにくくて混雑してる公共交通、ごみ箱が街にないなど)、食事(ハラル、酒など)、母国との気候の違いなどが挙がっていました。
日本スゴいみたいなテレビ番組多いですが、「国際化」するならば、まだまだ、できるところから改善してかなきゃいかんですな。