2019年9月29日
一昨年度、昨年度と委員として関わらせていただいた「地下水マネジメント」の検討成果が、「地下水マネジメントの手順書」として内閣官房水循環政策本部より公表されました。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/mizu_junkan/tikasui_management/tejunsho.html
地下水の利用って高度経済成長の頃は、工業利用で汲み上げすぎて地盤沈下を引き起こすというパターンが多かったようですが、さすがにそういうことはずいぶん減ってきたようです。しかし最近はペットボトルの水がよく売れるようになって、飲料を生産するために汲み上げるニーズが増えてきたようで、しかも上流のほうで汲み上げるものですから、下流のほうで地下水が涸れるんじゃないかという懸念もあるわけです。さらに環境管理という面でも、水循環を持続可能にすることは当然必要ですよね。
ということで、地下水のマネジメントをしないといけなくなってきているのですが、権利関係なども歴史的経緯があって複雑なため、ステークホルダーがうまいことやっていくためのガバナンスが重要になります。合意形成というやつですね。なのでワタクシが召喚されました。
結局、自治体レベルで動いてもらわないといけない(全国レベルで管理することではない)ので、こんな手順書というものを国が用意して、最終的には自治体がこれを参考にマネジメントを進めてもらうことを期待しています。目立った補助金がついてくるわけではないのですが、地下水の問題を抱えている、抱えていそうな自治体の職員・議員さんはぜひ参考にしてみてください。
そういえば5年ほど前に調査した福井県小浜市の地下水、最近はどんな感じかな?
2018年8月26日
日本一カネ持ちの村として知られる愛知県の飛島村。名古屋にも程近いため郊外住宅地開発が進みそうなものですが、村のほぼ全域が市街化調整区域なので都市開発ができないとのこと。
この記事をみると、「市街化区域はわずか8.66平方キロメートルしかなく、残りは全て市街化調整区域(13.87平方キロメートル)」とあるのですが、村の面積の1/3以上が市街化区域なら条件は悪くないのでは?不思議に思ったので、村のホームページで都市計画図を見てみました。
この都市計画図、近隣の自治体も含まれるのでわかりずらいですが、飛島村の市街化区域ってそのすべてが工業系の用途指定なんですね!それじゃぁ住宅地開発ができるはずあるまい(笑)。
で、さらによく見ると、飛島村中心部に小さいながらも地区計画の指定があります。市街化調整区域内の地区計画っていう、日本の都市計画制度が孕む矛盾を象徴するような制度ですね。渚地区、とのことで、google mapで見てみると・・・
なんでこんな場所が地区計画指定されてるんだろう・・・とさらに検索してみると、こんなのが見つかりました!
飛島村に誕生!│渚地区 住宅地(PDF直リン注意)
村自身が分譲住宅地の整備を始めたみたいです。そのための地区計画指定だったんですね。ネット上の記事なんか読むと、村役場は人口減少を危惧しているようで、その対策の一環なんでしょう。
とはいえハザードマップ(画質の粗さがなんとも・・・)を見ると、村のほとんどが、想定浸水深が2m超になってますね。コンパクトシティみたいなハナシを念頭に置くと、そもそも論として、こういう地域に人が居住するってどういうことなんだろう・・・と複雑な気分になります。
2018年3月7日
羽田空港の国際線が大幅に増便されて以降、成田空港は「遠い」「不便」といったスティグマ(烙印)が広まっているように感じます。個人的には自宅から成田空港のほうが利便性がよい(乗り換え回数が少なくて、しかも空いてる)ため、成田空港は嫌いじゃないので、なんとなく、残念です。
とはいえ、成田空港も第3ターミナルの新設や、入場時のパスポートチェックの廃止など、いろいろ努力されていて、旅客数もこのところ増え続けています。しかし、これからの国際的な交通のながれを考える上で、ひとつ気になる統計が。
(出典:成田国際空港(株)「空港の運用状況」)
航空旅客数は増えているのですが、「通過客」の数はけっこう、いい勢いで減少しているようです。
「通過客」とは、到着後に日本に入国しないで、そのまま他の国へと旅立っていく方々で、トランジットなどという言い方もします。なぜ成田空港でトランジットするのかといえば、北米・欧州とアジア諸都市を行き来する際、成田まで来て一度降機して、乗り換えて最終目的地へ向かう必要がある人たちも、けっこう、いるからなんですね。例えばベトナムから北米に行こうと思えば、直行便はないので、成田で乗り換える必要があります(もちろん香港や韓国などで乗り換えることも可)。
また直行便よりも、トランジットしてもらったほうが、航空会社として利益をあげやすい構造にあるようです。都市の順列組み合わせすべてに直行便を飛ばそうとすれば、各便の乗客は少ないのに、とんでもなく数多くのフライトを飛ばす必要があります。むしろ、どこかの主要都市に小さな機体のフライトで一度集まってもらって、それからまとまって大きな機体で長距離を飛んでもらったほうが、航空会社としては効率性が高く、安い運賃を提供できますし、利益も確保できます。いわゆる「ハブ・アンド・スポーク」という考え方です。宅急便の集配をイメージしてもらえるといいんじゃないかと思います。
そういうことで、アジア方面から北米あるいは欧州へ移動する人たちの「ハブ空港」として成田はこれまで重要な役割があったわけですが、ソウルや香港なども空港を拡大整備し、競争が激しくなったことから、アジアにおける乗り換え空港としての地位確保が厳しくなってきているのが、ここ10~20年くらいの傾向ではないでしょうか。
とはいえ、直近でも通過客が減り続けているのは別の理由があるようにも思われます。というのも、flightradar24.comで暇つぶしに飛行機の航跡を眺めていると、北太平洋を飛んでるフライトのかなりの数が中国諸都市と北米諸都市の間を飛んでるフライトなんですね。かなり前からflightradarを眺めていますが、ほんと、中国線の割合がすごい勢いで増えているように感じます。
ということで、わざわざ成田で乗り換えなくても、中国から直接、北米へと移動することが容易かつ安価になってきてるのでしょう。さらに今後は、機体の性能・燃費効率の改善で、ベトナムやシンガポールから北米への直行便を飛ばすようになるそうで、なおさら成田の通過客は減少しそうな気がします。超長距離の直行便は利益率が悪いそうですが、ビジネス客需要が十分あれば成立するようです。
先日ボストンに出張に行った際も、エコノミークラスの機内はベトナムの方々が多数いらっしゃいました。彼らがベトナムからの直行便で北米に向かうようになったら、日航のボストン線の機内は空いてしまい、利益が出なければ運休になってしまうかもしれません。それは彼らにとってはよいことでしょうが、僕らにとっては、ちょっと不便ですよね。そういう意味でも通過客を一定数維持したほうがよいはずですが、この減少傾向が続くと、ちょっと、ヤバいんじゃないかな、とも思います。