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2017年7月4日

デリバリープロバイダ問題はネット通販物流の転換点か

僕は埼玉の郊外暮らしで自分のクルマがあるので、amazonで買い物するときは常に、近所のヤマトの配送センター止にしてたんですね。ヤマトの運転手さんがいつ来るか、不安を抱えながら家で待機するのは嫌なんです。自分の自由時間に引き取りに行ったほうがよほど自由で気楽でした。唯一の欠点は、配送センターで例のamazonの箱を引き取るとき、「こいつ、家族に知られたくないエロDVD買ってるんじゃないの?」とセンターのおねえさんに訝しく思われているのではないかと勝手に不安になるくらいのもの。

しかし先月、釣竿をamazonで買ったんですが、いつもどおりヤマト運輸の配送センターを配送先に設定しようとしたものの、エラーが出て選択できないんです。しょうがないので自宅配送にしたのですが、結局、佐川急便が持ってきてくれました。ヤマト一社ではなく、いろんな会社が担当するようになったんですね。ということで配送センター止めが使えなくなってしまって、僕的には不便なことに。

で、いま、「デリバリープロバイダ」がネットで話題になってますね。amazonの配送が、佐川とか郵便とかじゃなくて、普段耳にしない会社も担当するようになってきていて、そのサービスの質があまりにヒドいというお話。

これまで私たち消費者は、ヤマト運輸の(相対的に)安価で良好なサービスを享受してきたものの、そのぶん、配送担当の従業員にしわよせがきていたわけです。それを是正するということで、生産者余剰と消費者余剰の分配の見直しとして、運賃値上げにつながったわけですね。結果として、amazonは配送料無料を貫くためにはヤマト運輸を利用できなくなり、他の安価でサービス水準の(相対的に)低い会社に委託するようになったのでしょう。

とはいえ、デリバリープロバイダのサービス水準は、担当者によってアタリハズレはあるのでしょうが、あまりにヒドいようですので、このままではamazonの通販ビジネス自体が成立しなくなるほどの悪影響がありそうです。となると、今後のamazonの配送を存続するためには、いくつかの選択肢しか残されていません。たとえば・・・

  1. 無料配送を廃止(あるいは最低購入額を大幅に値上げ)し、ヤマト運輸などで一定のサービス水準を確保
  2. 配送料無料としつつ、各世帯への配送を原則廃止し、コンビニ等での引き取りに限定
  3. ドローンや自動運転による無人化・機械化で労働コストの大幅な削減

などが考えられます。1.は楽天市場の店舗などでよくあるパターンですよね。2.はセブンネットショッピング(セブンイレブン)のモデルですね。僕が配送センターに引き取りに行っていたのもこのモデル。3.は夢物語とはいえ、技術開発は進められていますよね。

もちろん、現行のデリバリープロバイダのシステムをなんとか改善していく方向性もあるのでしょうが、結局、サービスを改善しようとすればヤマト運輸の頃と同じく、労働者の側に負荷が蓄積してどこかで破綻するので均衡解ではなさそうです。外国人「研修生」を使ってコストダウンみたいな話もあるようですが、さすがに運転は難しいんじゃないでしょうかね。

ということで、これまでのamazonの配送には無理があった(≒もうあの頃の便利さには戻れない)という認識をまずは社会全体で共有し、持続可能なネット通販物流としてどのような形が望ましいのか(有料か?引取りが原則か?ドローン開発を加速化するか?など)を企業と消費者の駆け引きの中で模索していくことになるのでしょうね。先ほどから言っているように、個人的には2.のモデルが好きです。

いま、ネット通販物流のシステムがより持続可能なものへと転換するチャンスが到来しているようにも思えます。上記のアイディアはすでに検討済でしょうが、僕には思いつかない、画期的で環境負荷が小さくて持続可能なシステムが導入されればもっとよいのですが。


カテゴリ: Environmental policy,Public policy,Urban planning — Masa @ 4:48 PM

 

2017年6月28日

幼稚園や学校の騒音問題をどうするか

越谷でこんな事件があったそうですね。

幼稚園教諭に包丁向ける=「騒音うるさい」男逮捕-埼玉県警

包丁とは物騒な話で、そりゃ逮捕されるでしょうし、許せないと思う人も多いでしょう。

とはいえ、幼稚園や学校のまわりって、決して静かではないんですよね。自分の身の回りにないから僕も「うるさい」と思わないですが、自宅の目の前にあったら「うるさい」と感じるかもな、と思わなくもないです。

ひとつの対策は、飛行場のように周囲の家に防音工事を施したり、音源たる幼稚園や学校が音を出さないように屋外活動を控えて窓を閉め切ったりと、徹底的に音を遮断する工学的な方法でしょうか。費用もかかりますし、子供が園庭・校庭に出れないというのは不健康な気もします。

もうひとつの対策は、こういう事件に至る前に、うるさいと感じる人が気軽に話を聞いてもらえる場をつくることかと思います。たとえば、騒音は公害の一種ですから、公害紛争処理の制度を利用することもできます。もちろん幼稚園と近隣住民が直接話し合ってお互い納得いく対策がとられればそれでよいのでしょうが、そういうややこしい対話・調整はそれなりの経験とスキルが必要で、当事者同士の話し合いでは解決せず、逆に、今回の事例のように悪い方向へと進むことも多いでしょう。そういうときこそ、都道府県職員や専門家が間に入って仕切ることで、問題の深刻化を落ち着かせることができるはずです。

これから少子化が進むから騒音問題は減るのかもしれませんが、逆に、少子化で「甘やかされて」育った人が増えることでちょっとした騒音も気にする「わがまま」な人が増えることも考えられます。マイカー所有も増えたので、幼稚園や学校周辺の路上駐車が増えてる問題もあります。こういうとき、苦情や不満を早めにぶつけられる捌け口がないと、鬱憤が蓄積して、今回のような事件が繰り返されるかもしれません。公害紛争処理もひとつの手段ですが、役所も忙しくて手が廻らないかもしれませんので、たとえば幼稚園や学校の関係団体が、第三者的立場から紛争解決に乗り出す仕組みがあってもいいのかもしれませんね。


カテゴリ: Environmental policy,Public policy,Urban planning — Masa @ 7:59 AM

 

2017年6月24日

「ポートストア」から見えてくる臨港地区のふしぎ

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魚釣りに行くと、巷では聞いたことがないコンビニを見かけることがあります。その名は「ポートストア(Port Store)」。東京だと若洲、横浜だと本牧の釣り場に行く途中にあります。

しかし外見はよく見ると「サンクス」風。しかも中に入って売ってるものはファミマのものばかり(サンクス合併したので)。どういうことでしょうか?

実はポートストアが立地しているのはすべて、「臨港地区」と呼ばれる区域内にあります。臨港地区は、都市計画法に基づき指定される地域地区の一種で「港湾を管理運営するため定める地区」(第9条22項)とされています。臨港地区内は港湾法第39条で定められた9種類のなかから分区(用途地域のようなもの)を指定することができ、各分区の目的に合致する範囲内でのみ、建築や事業が認められています。

臨港地区はあくまで港湾を管理運営するための地区ですので、一般市民向けの事業を行うことは基本的にはあり得ません。横浜の多くの埠頭が立ち入り禁止になっているように、一般市民が入ってこないことが大前提です。しかしS48年の港湾法改正で「その景観を整備するとともに、港湾関係者の厚生の増進を図ることを目的とする区域」として「修景厚生港区」という分区が設けられました。この分区指定であれば、公園などの整備が可能となります。たとえば、本牧埠頭や大黒埠頭の海釣り公園は「修景厚生港区」に指定されています(横浜港の分区指定図)。

臨港地区内には食堂や売店などもありますが、やはり建前上は港湾で働く人たちの施設ということになります。実は港湾労働者向けの住宅も立地していて「港湾住宅」などと呼ばれます。これらの施設を運営してきたのが、横浜港の場合は 一般社団法人 横浜港湾福利厚生協会、東京港の場合は一般社団法人 東京港湾福利厚生協会という組織です。あくまで港湾の管理運営に資するという法の縛りを満足させるためには、こういう組織を一枚噛ます必要があったんでしょうね。

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で、冒頭のポートストアはこれらの協会が営業している「売店」なのです。若洲のポートストアも正式には東京港湾福利厚生協会の「若洲サービスセンター売店」となります。で、建前上、あくまで港湾で働く人たちのための売店であって、一般市民ためのものではないわけです。もちろん、私たち釣り人などが目にするポートストアがあるのは立入禁止のエリアではないので、現実には誰でも入店して買い物ができるわけですが、あくまで建前上はダメなんですね。ちなみに横浜港の場合、私たちが立ち入ることができない埠頭エリアにもいくつかポートストアがあるみたいですね。

だからといって、別にサンクスのままでいいんじゃないか?とは思うわけですが・・・ここからは推測ですが、サンクスのままだと他の一般市民向けの店舗と同一視されて上記の「港湾のため」という建前が成立しなくなるから、敢えて店名を替えてるんじゃないかなぁ・・・と思います。とはいえ、神戸港や千葉港などでは、ローソンとかファミマとかの名称で臨港地区内に出店できているようなので、東京港と横浜港には何か歴史的文化的な背景もあるんでしょうね。

実は、僕たち一般市民が買い物や遊びに行く「みなとみらい」地区も半分くらいが臨港地区指定がかかってるんですよね。横浜市の臨港地区の分区指定図をみると、法規制と現実の辻褄あわせのため、いろいろな工夫が見られますよ。この件についてはまた今度。

追記:1枚目の写真、よく見たら入口に「Welcome to Family Mart!」なんてバナーが掲げられてるwww。


カテゴリ: Environmental policy,Fish,Marine policy,Urban planning — Masa @ 3:48 PM