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2016年4月26日

イノベーションの順応的管理

自分は日本の最近の大学改革の第一波の影響を受けた世代(40代前半)でありましょう。自分自身は、修士・博士課程は日本の大学システムとはほぼ絶縁状態でMITにおりましたので、影響は少なかったとはいえ、日本で教職についてからというもの、10年弱は時限プロジェクト予算での雇用を渡り歩く「特任」教員でありました。国立大学法人化以前はほぼあり得なかった、テニュアトラック以外の外部予算に依存する准教授職であったわけです。

それはいま振り返ってみればとても不安な生業であるわけですが、しかしまた、それはそれでやりがいのある仕事だったかもしれません。

というのも、自分の研究テーマがある程度、外部資金の拠出元の意向に左右されるので、自分が(当初)強い興味を持ってないことについても、生業のために研究することになります。それって研究者として悲惨、みたいな見方もあるでしょうが、逆に、タコツボ(いま風に言えばサイロ)に収まらずに、いろんな分野・業界の人々と交流できる環境を与えられたとも言えるでしょう。

で、思いついたのが、「イノベーションの順応的管理」ということば。

小職、最近まで文科省の「科学技術イノベーション政策のための科学(SciREX)」事業で特任雇用されてましたので、科学技術イノベーション政策なるものに焦点を当てた研究が期待されておりました。そんなこともあって、政府の「イノベーション万歳!」政策について批判的に検討しておりました。それでやはり出てくるのが、ロードマップという思考で、特に現政権になって経済産業省の影響力が強くなったせいか、計画文書にもよくあらわれます。

ロードマップとはなにかというと、これから10年なり20年なり先の目標を定めた上で、技術開発の動向を網羅的に補捉したうえで、いつまでにどのような要素技術を開発する必要があるかを特定して、順序だてて各要素に重点予算配分をしていく、という極めて美しい古典的OR思考に則る計画手法です。それはそれで美しいわけですが、現実に、そういう大規模プロジェクトが当初の目標を達成してきたかというと、無意味ではないにせよ、予定通りにはならないというのが、高度経済性長期における類似計画からの教訓ではなかったかと思います。

で、また話が逸れますが、別の環境政策の研究プロジェクトで、生態系管理とか里山里海とか、そういうことを研究している研究者さんたちともごいっしょすることがあったのですが、そのような業界では、旧来の計画法に対する反省が強いわけです。まだよくわからない自然のシステムを相手にしてるわけで、計画したって思い通りにいかないどころか、もっと悪い方向にいったりする。なので、バクチのような長期計画を決めるんじゃなくて、長期ビジョンを念頭に置きつつ、毎年のように更新されていく新しい知見を計画に反映する、計画を修正していくことのほうがダイジでしょ、というのが、環境政策業界の常識になりつつように思えます。

さて、イノベーション政策ですが、相変わらずロードマップ思考で、未来を見据えてそこに向けて要素技術を開発していくみたいなことが書かれているわけですが、どうなんでしょうね?技術開発の動向だって世界規模でコロコロと変化するわけで、日本だけで5年後10年後を見据えて計画をたてて実行しても、ガラパゴス一直線、ってやつでしょう。

だからこそ、環境政策の思考を取り入れて、イノベーション政策も順応的管理を前提にしたらどうでしょう。もちろんその傾向は出てきていて、研究者では「イノベーションのエコシステム」なんて物言いをする人も多くいます。でも、政策の文章を読む限りは昔の計画のパターンとあんまし違いないよナーと感じる限り。

ということで、「イノベーション政策の順応的管理」という思想が、科学技術イノベーション政策の現場に、必要なんじゃないかと思うところです。

で、こういう思考ができるのも、特任職を渡り歩いて、いろいろな分野の知識を吸収する機会があったからかな、とも思う次第です。


カテゴリ: Environmental policy,Science/Technology Policy — Masa @ 4:13 PM

 

2016年4月22日

後楽園駅でもエスカレーター右側を空けるの止めたほうがよいかも

こんにちは、明治大学の松浦です。明大に転職して以来初のブログ投稿です。

ということで、通勤ルートが変わりまして、南北線から後楽園駅で乗り換えて、神保町駅か御茶ノ水駅を使うことになりました。研究室により近い神保町駅へ行くのがデフォルトで、後楽園駅で都営三田線に乗り換え(※後楽園駅と春日駅は実質同じ駅)なのですが、あまり利用者がいないのか、けっこう、スムーズな乗り換えです。ただし三田線は混みすぎ。

それはおいといて、キャンパスの御茶ノ水駅側のほうで用事があるときは、御茶ノ水駅を使うこともあるのですが、南北線から丸の内線の乗り換えはほんと、苦行です。というのも比較的新しい南北線は地下奥深く、それに比べて丸の内線は地上に露出してて高架になっているので、地下4階から地上2階まで移動しなきゃいけないイメージです。後楽園って実は本郷の丘と護国寺のほうの丘との谷あいに位置するんですね。

で、乗り換えですが、もちろんエスカレーターが重装備されているので、時間さえかければ、(メンタルはともかく)フィジカルに疲れることはありません。しかし、僕が朝の通勤時間帯にこの経路を使ってしまうと、フィジカルにも消耗します。なぜか。

エスカレーターで歩く(登る)人は右側、止まる人は左側という不文律は人口に膾炙したところですが、後楽園駅のエスカレーター(特に地下3階から地下1階までの長いやつ)を登るのはクソ疲れるのでみんな左側に乗ろうとします。しかしエスカレーターの処理能力以上に通勤客が多いので、左側に乗ろうとする人たちが待機して、踊り場やプラットフォームに滞留します。しかし朝のカッタルい通勤時間から右側を駆け登ろうとする武井壮的肉体派は少ないので、右側はかなり空いているのです。かといって、たまに登る人はいるので、右側で止まるのもルール違反な気がします。なので、僕は渋滞嫌いなので、混雑時はハァハァ言いながら地上2階までエスカレーターを登ることにしています。

まぁそんな不都合が起きているわけです。

こういう問題はどこでもあるようですね。ということで、ロンドンの地下鉄は、片側を歩く人にあけておく(ロンドンは左側らしい)のを止めさせるようにしたそうです。いちおう彼らの試算(ホルボーン駅のエスカレーター)によれば、左を歩く人用に空けると81.25人/分の処理能力だそうですが、両側を止まって使うと112.5人/分の処理能力だそうです。このホルボーン駅、どうやら後楽園と同じで距離が長い(高低差23.41m)だそうで、やはり歩く人が少なくて、乗り場に滞留しちゃってたそうです。

The tube at a standstill: why TfL stopped people walking up the escalators| The Guardian

ということで海外事例大好きな日本のお役所ですもの、国土交通省はぜひこのアイディアを社会実験として東京メトロと協力して導入してほしいなぁ、と思う次第。夏の概算要求の球出しに向けてつかってみたらどうでしょう?


カテゴリ: Environmental policy,Travel,Urban planning — Masa @ 9:19 AM