2016年6月10日
高緯度ハブの航空会社の可能性
アイスランドはご存知の通り、大西洋のいちばん北にある島国で、火山や温泉やビヨークで有名であります。絶海の孤島みたいな感じもあり、「みんなが行かないところに観光に行きたい」ニーズを満たしているニッチな島かもしれません。議会政治という面でも特徴的な政府ですね。
アジアからは物理的にとても遠いのでアジアの人たちにとってはあまり縁がない国ですが、実は、アメリカやヨーロッパの人たちにとってみれば、ちょうど中間地点にあるので、わたしたちに比べればずっと、身近な国なのではないかと思います。飛行機で欧~米間を移動したら、近くを通り過ぎるわけです。
そんな地の利を活かしてか、アイスランド航空は、レイキャビクをハブとして、欧州と米国をつないできたんですね。つまり米国発の人はまずレイキャビクに飛び、そこで乗り継いで欧州の目的地に飛んでいく、と。レイキャビクなら中間地点なので乗り継ぎに伴う遠回りを防げるでしょう。また、小さな空港なので、ヒースローやドゴール空港のように、乗り継ぎの移動で苦労したり、着陸渋滞で遅延したりするリスクも小さいわけです。あと、直行便で長時間同じ席にとどまっているのが辛い人も多いでしょうが、レイキャビクで一度下ろされるので、そういう人にとっては身体的にも負担が少ないかもしれません。
アイスランド航空のB757(2003年レイキャビク空港にて筆者撮影)
ただ、顧客メリットがそれだけじゃ主要路線で直行便を飛ばしてる大手の航空会社に勝てないので、「LCC」なんて言葉ができる以前から、アイスランド航空はLCCのようなことをやっていました。つまり、椅子もちょっと狭くて、値段を安くしてロードファクターを高めて、メインの顧客は学生とかバックパッカーとか、みたいな。自分もボストンに暮らしてた頃、欧州出張でいちど、使ったことがあります。
このビジネスモデルを使って、アイスランドに新しいLCCができているようです。WOW Airという会社で、そのネットワーク図を見ると、レイキャビクをハブとして欧米各都市をつなごうという意図が明らかです。
こんなふうに、緯度の高い地域にある航空会社が、大圏航路を活かしたハブ&スポークのネットワークを構築するというのが、ひとつの趨勢になってきているようにも思えます。フィンランド航空も中国等需要の増加で、アジア各都市とハブであるヘルシンキを結ぶ路線を勢いよく増やしてます。
そう考えると、これから、アラスカのアンカレッジをベースに、アジアと米加を結ぶ航空会社が出てきてもいいんじゃないかな、という気がしなくもないです。日米間の長時間フライトに乗っていると、アラスカあたりで「まだ半分かよ・・・」「そろそろ降りたい・・・」みたいな衝動に駆られることありますもんね。最近勢いのあるアラスカ航空あたり、やってみたらおもしろいんじゃないかなという気がしなくもなく。