2013年8月8日
いま「アジア環太平洋地域の人間環境安全保障ー水・エネルギー・食料の連環ー」という地球研のプロジェクトに参加させていただいて、小浜の地下水のステークホルダーについて学生と一緒に調査しています。
で、小浜という街は非常に地下水が豊富で、場所によっては、穴を掘れば地下水が勝手に地上に吹き出る、というほど豊富みたいです。実際に現地調査したときも、滾々と湧き出る地下水を、たくさんの地元の人たちが調理用に汲んで行っていました。また、なんと、地下水は海底から湧いているそうです。つまり山で涵養された地下水のうち取水されなかったぶんは、都市の下を通過して、小浜湾やさらにもしかすると湾外の海底から湧出しているそうです。小浜湾内の湧水は、地元の海で泳いだり潜ったりすることがある人たちはかなり具体的にご存知のようです。
で、この小浜でどれくらい地下水のことが理解されているかというと、ほとんど判ってない、という状況だそうです。地域の人の理解は、基本的には「掘れば水が出る」ということで、最近は路面融雪用の利用が増えたために水が出にくくなっているものの、資源量がどれくらいあるとか、どこにどういう水が流れているのか、とかについて、井戸掘りをしている業者さんはある程度感覚的に理解されているようですが、学術的には「わからない」ことが非常に多いそうです。ですので小浜市は、これから地下水について包括的な調査を始めるそうです。これはたぶん珍しいケースで、全国の地方都市では、地下水の挙動がわからぬまま、いわゆるcommon pool resourceの問題が発生し、地下水の枯渇が深刻化しているようです。
福島第一原発の地下水問題が昨日から大騒ぎになっていますが、たぶん、地下水の挙動について、何も判ってないのではないかと思います。もし海底湧水がある場合には、周囲の山林で涵養された汚染水が地下を通過し、海底から湧出することもあるでしょう。地下水の移動速度もよくわからないのですが、かなりの年月をかけて移動するみたいなので、忘れた頃に海底から汚染水が出てくる可能性もなくはないのではないかな・・・と思います。いずれも「推測」の域を出ませんが、わからないことが多い、のは事実ではないかと思います。
2013年8月5日
脱法ハウス:増える女性専用…元住人「低収入、親頼れず」- 毎日jp(毎日新聞)
こんな記事をふと読みまして、シェアハウスという考え方が次第に「脱法ハウス」へと変容していく過程をネットでいろいろ見つけました。
要は、デカい家をsubdivideして多数の人々が劣悪かつ危険な環境で居住する、ってことでしょう。しかし法規制が曖昧なところもあって、取締りもあまりキチんとできてないみたいです。
脱法ハウスについてネットで見ていたらふと、NYCのtenementのことを思い出しました。19世紀の話ですが、ニューヨークには移民が多数流入したものの、もちろん土地なんてありませんから、ただでさえ狭いアパートに壁をつくったりして、大量の親族がすし詰めで住んでいたのです。そういうアパートをtenementと言って、劣悪な住居環境の代名詞となりました。そんなこともあって、いまでも、米国では都市部の住居環境についての規制がいろいろと厳しいわけです(しかし家賃規制はゆがんだ方向にいってしまっていますが・・・)。
日本ではtenementみたいな歴史的記憶がないから、脱法ハウスも必要かもね、って方向に議論が進んでしまうのかもしれませんね。いま脱法ハウスに住んでいるみなさんが所帯を持って、子供を含めて劣悪な環境で生活しなければ時代がくるかもしれないのに・・・。
2013年8月2日
平成25年度特別世論調査 – 内閣府.
竹島に関する世論調査ですが、調査設計が悪いんじゃないかな、と思います。
後半に実際に使われた調査票が載っていますが、「資料1」なる文書をまずは調査対象者に読ませています。竹島に関するかなり詳細な記述なのですが、質問に回答してもらう前にこれを読ませる意図がいまいち理解できないです。竹島についての認知度を確認したいのであれば、事前に情報を与えないのが普通じゃないかと思われます。かなり詳しい情報を与えた後で、資料1に正解が記載されている「竹島に関してあなたが知っていたこと」を選べと聞くのは、どうも理解しがたいです。もちろん、質問の背景や文脈を理解してもらうために関連情報をまとめた資料を提示することはあるでしょうが、認知を問う質問の前に、質問で聞く内容とほぼ同じ情報を提示してしまうのは、大きなバイアスがかかるんじゃないかな、と思います。
「国民の認知度は高いよ」というデータを取りたかったのかもしれませんが、逆噴射してしまって、「竹島は・・・我が国固有の領土であること」のような比較的誰もが知っていそうな選択肢でさえも、選択する人が60%程度にとどまってしまったのでしょう。素直に質問していたら、もう少し高い数字になったんじゃないかと・・・信じたいところですが。もしかして、ほんとに6割程度しか認識していないのかなぁ・・・うーん、もう少し信頼できるデータが見たいですね。