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2013年7月4日

IPA2013(1日目):Deborah Stone先生の基調講演

Deborah_Stone_at_IPA2013

ウイーンに来ております。Interpretive Policy Analysis Conferenceという、メインストリームの学会ではありませんが、私の研究分野ではそれなりに著名な方々が集結するなかなか勉強になる学会です。

この学会は基調講演がいいです。去年はわが心の師匠John Forester先生とMieke Verloo先生。去年はVerloo先生の講演を通じて、Mouffeのradical democracyについて詳しく知ることができました。

今年はPolicy ParadoxでおなじみのDeborah Stone先生ということで、自分の発表日ではないのですが1日長く滞在して基調講演を拝聴することにしました。

基調講演のタイトルは“Emotionally Loaded Controversies”“Taking Emotion Seriously”。途中で演題を変えてしまう演出がこの学会らしくてよいです。で、本題は、interpretive policy analysisのなかで、emotion(感情)をどう扱うか、というお話。

研究者というもの、「感情」を排除することで「合理的」な分析を出すというものの、現実には「感情」は研究対象として排除すべきではないだろうし、実際の政策過程でも人々の「感情」が機能している。

そこで終わりなら、ありがちな「合理性」至上主義批判のような気もしますが、対象者の感情だけでなく、研究者自身の感情も議論するところがこの基調講演の興味深いところ。

いろいろ事例をお話されましたが、最後の発言がいちばん心に残りました。

“Be there, emotionally.”

研究者が対象者と共感するのはあたりまえだし、世の中をよくするために、その感情にしたがって行動してもいいんだよ、とすでにシニアのStone先生がメッセージを伝えられたことは、会場の大半を占める若手研究者の励みになったことと思います。

博論審査や査読を通じて、自分の「気持ち」(もしかすると「やる気」)をどんどん削ぎ落としていくのがこの職業の悪しき慣習のような気がしていましたが、Stone先生のお話を聞いて、「自分の気持ちに素直になろう!」と心を新たにしました。


カテゴリ: Public policy — Masa @ 11:16 PM

 

ハーレンの暴動の研究

Facebook birthday invite leads to mayhem in Dutch town, authorities say – CNN.com.

この事件で、なぜこんな暴動へとエスカレートしたのかを「研究」した発表を聞いた。行政側に予見する能力がなかったことが問題で、マニュアルなどをつくってもだめで、こういう状況に即応できるガバナンスが必要とな。

ペーパーが提出されてないので中身がよくわからんのですが。

62_The Dynamics of Escalation in Policy Conflict


カテゴリ: Public policy — Masa @ 10:42 PM

 

The More We Know (Klopter and Haas, 2012)読了

NBCとMITが協力して開発したweb教育コンテンツのiCueの『失敗』を記述したというので、新刊で自分の専門分野じゃないけど、読んでみた。

読み物としてはおもしろいです。

最初にダメ出しするとすれば、いくつかの章は不要というか、誰かのPh.D.論文そのまま使ってるんじゃないの・・・と言いたくなるような内容。また、MIT Pressからの出版前にあわてて理論的な解釈をつけたんじゃないの?という雰囲気が濃くて、付け焼き刃のようにロジャースのDiffusion of Innovationの枠組みを使っているのも、なんだかなぁ、という感じ。

で、おもしろいのは何かというと、このiCueなるシステムが失敗した理由のひとつが、私なりに解釈すれば、教育業界の規範や文脈とあってなかったということ。教育というのは規範が強固な業界なのでしょうね。未来を見据えた新たな教材を導入しようとしても、現状の規範と適合しなければ、すぐにrejectされてしまうみたいです。他の業界なら、技術導入を通じて規範が変容することもあるのでしょうが、教育業界は、この規範が非常に強固なのでしょう。強固な理由もわからなくはありません。

もうひとつの失敗要因として、ターゲットオーディエンスが不明瞭で、開発途上でブレたこともあげられています。最初は、Advance Placementを希望する高校生というニッチなセグメントを狙っていたのに、収益確保のために教員や組織としての高校を対象に含めようとして、八方美人なシステムになってしまい、逆に各セグメントにとってのウリを失い、魅力的でなくなったそうです。

前者の問題については、トランジション・マネジメントの思想が必要だったのでしょうね。そういえば、来週12日、トランジション・マネジメントのセミナーやります(笑)。で、後者については、自分のやってるいろんなプロジェクトのマネジメントでも問題になってて、結局、誰が狙いなのかをハッキリさせないといかんな、と自戒するところであります。

読み飛ばしたくなる章もいくつかありますが、イノベーション、特に教育業界のIT化に興味がある人は、読んで損はないでしょう。


カテゴリ: Public policy,Science/Technology Policy — Masa @ 10:11 PM