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2018年1月24日

封鎖できなかった首都高の判断にみる正常性バイアス

大雪以来、首都高がほとんど通行止になっちゃってますね。

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昼間ならもう走行できるんじゃないの?と思いますが、22日にあれだけ事故されちゃったら、首都高公団もドライバーのこと信用できないでしょうね。アイスバーンが発生しなくなるまで除雪しないと開放できない気持ちにも同情できます。

山手トンネルが10時間動かなくなっちゃった原因のトラックはちゃんとチェーンつけてたらしいので、ドライバーを責めちゃいかんような気がするわけですが、他の場所だとやっぱしノーマルタイヤで登坂しようとしてスタックしたり、カーブでスリップしちゃったみたいな案件が多いようですね。そう考えると、後知恵で首都高公団を責めてもしょうがないですが、やっぱし、チェーン規制や通行止をもっと早く出しとけばよかったんじゃないかな?という考えにも至りますよね。

で、この報道。

大雪で首都高10時間立往生 なぜ起きた? 国交省が検証指示(NHK)

チェーン規制を行わなかった理由について、首都高速道路は「利用者の大半がノーマルタイヤをつけている中でチェーン規制を行えば、大きな混乱が起きる可能性があると考え、雪の影響が出た段階で通行止めにする方針だった。対応に問題なかったかは今後、検証したい」と話しています。

このコメント、典型的な「正常性バイアス(normalcy bias)」ですよね。「まだ大丈夫だろう」「いま規制したらクレーム殺到だろうな」という思い込みや恐怖心で重大な決断を先延ばしにしてしまい、問題を深刻化させてしまう事象はこれまで数多く報告されています。記事によれば、過去5年間チェーン規制を出したことはなかったようですので、ここ数年の大雪は規制なしで乗り越えられてたんでしょうね。だからこそ、「今回も大丈夫だろう」という判断に陥ってしまったのかもしれません。

こう言うと、今回の問題の原因が首都高の担当者の判断ミスのように思われるかもしれませんが、実はそんなことはなくて、むしろチェーン規制に至るプロセスや基準が明確にされていないことが問題なんでしょう。結局、個人や集団のその場での判断に依存しちゃうと、人間である以上、どうしても「正常性バイアス」の罠にハマるわけで、その罠にハマる人を責めてもしょうがないわけです。むしろ管理の責任者が、災害対応のプロセスや基準をよくよく考えて、事前に明確にしておかなければならなかったのではないでしょうか。そう考えると、「国交省が検証指示」なんて記事のタイトルになっていますが、実はその責任はブーメランで国交省に帰ってくることになるのではないかとも思われます。

首都高のこのコメント自体が貴重な証言だと思います。同じような問題を起こさないためにも、大雪時(あるいは同様の異常気象時に)どういう対応をとるべきなのか、社会の合意(※規制を安全側に振り過ぎるとドライバーも困るはず)も得ながら、整理していく必要があるのでしょう。


カテゴリ: Public policy,Urban planning — Masa @ 11:30 AM

 

2017年12月18日

大宮の風俗店火災に思う都市計画と防火

大宮の風俗店で火災があり、数名の方が亡くなられたそうです。インテリアの構造上、避難が困難で被害が大きくなってしまったのでしょうか。以前も歌舞伎町で似たような事件がありましたね。

で、現場をGoogle Mapで見てみますと・・・

こんな感じのところ。大宮駅の北東側の風俗街ですね。訪問したことはないですが大栄橋をクルマで渡ることも多いのでその脇にそういう街があることは知ってました。氷川神社のお膝元で、赤線地帯としていろいろ長い歴史があるんだろうな、という気がします。

だからこそ、消火活動も大変だったのではないかと思います。明らかに街路は狭くてクネクネしてますし、ストビューで散歩してみると、かなり狭隘な細街路にも風俗店が立地しているようです。普通の大型の消防車は入っていけないでしょうね。単なる風俗店の火災としてだけでなく、大宮の都市計画の問題としてもとらえるべき火災だったのではないかと思います。

最近、「夜の都市計画」とか、まちづくりとか、そういう分野で、こういう猥雑な感じの街並みがポジティブに評価されがちかと思います。まぁもちろん、この雑然とした街路の構造だからこそ、ソーシャルキャピタルのようなものが豊かになるという、ジェイン・ジェイコブス的な思想もわからなくはないです。かといって、こういう街並みって、火災などの災害に対してはほんと、脆弱なんですよね。直下型地震とか起きたら大変なことになるでしょうね。だからといって、画一的な区画整理・再開発で碁盤の目のような街並みを形成すべき、ル・コルヴュジェの輝く都市マンセーって方向へと振り子を揺り戻すだけでもよくないだろうなと。

ジェイコブズvs.モーゼス(ル・コルヴュジェ)的な二項対立でまちづくり(ジェイコブズ至上主義)を語っている限り、こういう火災はなくならないし、大震災などが起きたときには目も当てられないことになるでしょうね。まぁ端的に言えば、猥雑な感じの街を推すのであれば、その代償として、防災についてソフト・ハードの両面できちんと対策を打っておく必要があるということなのでしょう。自衛消防団のような組織は必須でしょうし、建物も見えないところでの耐震・防火や複数の避難経路の確保など、目一杯の対策を施しておかないと・・・災害の被害者に対して都市計画家がどう責任とるんだ、という問題になるのではないかと思います。


カテゴリ: Urban planning — Masa @ 10:18 AM

 

2017年11月22日

高円寺のおもしろさ

指導しているバングラデシュ出身の留学生(日本語話せない)が商店街のリサーチをしたいということで、どこの商店街を視察・勉強すればいいかなと悩んでいたのですが、青山先生&早坂都議にご紹介いただき、昨夜、高円寺の商店街に伺ってきました。

聞き取り調査前に1時間ほど、学生と「まちあるき」したのですが、僕が想像していた以上に面積が広く、また栄えていたので、かなり驚きました。

個人的に気になったのが、「若い人たち」がやっていそうな店舗・レストランがかなり存在したことです。

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もちろん、6mの狭隘街路に昔ながらの肉屋さんや魚屋さんが立ち並んで賑わっている、いかにも商店街という感じの場所もありましたが、それ以外の少し人通りの少ない商店街でも、カフェやバー、はてまた何を売っているのかよくわからない怪しい店など、通りに面して「何か」店が開いている状態が続いていました。要は「寂れたシャッター街」が見つからなかったということです。

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南口の駅から少し離れたルック商店街というところでは、昔ながらの電気屋さんと若者向けの古着屋さんが共存して栄えているという、興味深い風景を見つけることができました。パッと見た感じはただの商店街なんですが、商品構成やディスプレイをよく見ると、かなりオシャレなストリートに仕上がっています。

結局、高円寺の街を歩いてみた感想は、昔から店を営んできたオーナーが若者たちへ積極的に店舗を貸すことで、街が盛り上がってるんじゃないかな?ということです。店舗部分をわざわざ貸さなくてもアパート経営などで十分生活できるオーナーも多いんでしょうが、敢えて貸してるんじゃないか、あるいは貸すことを後押しているグループがいるんじゃないかなという気がします。だからこそシャッター街にならず、若者を呼び込めるおもしろい街になってるのかなと思います。新宿から近いですしね。

それにしても、自分はショッピングモール依存の郊外生活がデフォルトなので、高円寺のまちあるきは刺激的でした。

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カテゴリ: Meiji University,Tokyo,Travel,Urban planning — Masa @ 4:30 PM