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2017年12月19日

クリティカルシンキングな魚釣り

頭の中は魚釣りのことでいつもマインドフルな松浦です。

先日こんな本を読みました。

この本、かなりよくできています。来年は修士論文指導に使おうかと思うほど。論理的に検証するために何が必要かをわかりやすく説明しています。

で、魚釣りなのですが、けっこう、クリティカルシンキングがきちんとできていないなぁ、とふと思いました。というのも、「これをやったら釣れた」という情報に釣り人は異常に敏感です。もちろん、同じやり方をすれば釣れる可能性が高くなるので、周囲の釣り人の真似をすることが釣り上達の秘訣だと一般的に考えられています。

しかーし、現実には同じ釣り方をしてもなかなか釣れないことも多いんですよね(逆に、釣り方真似したら爆釣なんてことも)。そんなとき、「あー、俺が釣りが下手糞なんだ」とすぐに自分を責めがちですが、実際は「下手糞」そのものが問題なんじゃなくて、何が原因で釣れないのかを追求しないから「下手糞」なんですよね。

仕掛けを同じにしたとしても、場所・時間、潮の状況、竿・リールの選択、タナ(深さ)の合わせ方、エサのつけかた、アタリの取り方・・・多くの要因が複合的に影響して、最終的に魚が食いにくるか、掛かるかどうかが決まるわけです。なので、「これをやったら釣れた」は必要条件のひとつとして参考になるかもしれませんが、十分条件ではないわけですよね。

また因果関係を明確にするには、「これをやったら釣れた」と同じく「これをやらなかったら釣れない」ことも確認しないといけませんよね。たまたま別の要因が効いて釣れたのかもしれなくて、「これ」の有無で釣果が変化することを同時点・同じ場所で確認しないといけません。

そういう思考ができないとちゃんとした論文は書けない(「これをやったらうまくいく」という事例紹介で終わる)ので、釣りを含めて、クリティカルシンキングをもっと心がけないとなぁ、と思った次第。


カテゴリ: Fish — Masa @ 4:09 PM

 

2017年12月18日

大宮の風俗店火災に思う都市計画と防火

大宮の風俗店で火災があり、数名の方が亡くなられたそうです。インテリアの構造上、避難が困難で被害が大きくなってしまったのでしょうか。以前も歌舞伎町で似たような事件がありましたね。

で、現場をGoogle Mapで見てみますと・・・

こんな感じのところ。大宮駅の北東側の風俗街ですね。訪問したことはないですが大栄橋をクルマで渡ることも多いのでその脇にそういう街があることは知ってました。氷川神社のお膝元で、赤線地帯としていろいろ長い歴史があるんだろうな、という気がします。

だからこそ、消火活動も大変だったのではないかと思います。明らかに街路は狭くてクネクネしてますし、ストビューで散歩してみると、かなり狭隘な細街路にも風俗店が立地しているようです。普通の大型の消防車は入っていけないでしょうね。単なる風俗店の火災としてだけでなく、大宮の都市計画の問題としてもとらえるべき火災だったのではないかと思います。

最近、「夜の都市計画」とか、まちづくりとか、そういう分野で、こういう猥雑な感じの街並みがポジティブに評価されがちかと思います。まぁもちろん、この雑然とした街路の構造だからこそ、ソーシャルキャピタルのようなものが豊かになるという、ジェイン・ジェイコブス的な思想もわからなくはないです。かといって、こういう街並みって、火災などの災害に対してはほんと、脆弱なんですよね。直下型地震とか起きたら大変なことになるでしょうね。だからといって、画一的な区画整理・再開発で碁盤の目のような街並みを形成すべき、ル・コルヴュジェの輝く都市マンセーって方向へと振り子を揺り戻すだけでもよくないだろうなと。

ジェイコブズvs.モーゼス(ル・コルヴュジェ)的な二項対立でまちづくり(ジェイコブズ至上主義)を語っている限り、こういう火災はなくならないし、大震災などが起きたときには目も当てられないことになるでしょうね。まぁ端的に言えば、猥雑な感じの街を推すのであれば、その代償として、防災についてソフト・ハードの両面できちんと対策を打っておく必要があるということなのでしょう。自衛消防団のような組織は必須でしょうし、建物も見えないところでの耐震・防火や複数の避難経路の確保など、目一杯の対策を施しておかないと・・・災害の被害者に対して都市計画家がどう責任とるんだ、という問題になるのではないかと思います。


カテゴリ: Urban planning — Masa @ 10:18 AM

 

2017年12月15日

台湾のレシートがスゴイ

今週火曜日に台湾の国立中山大学主催の「離岸風力発電国家政策与法律国際研討会」で発表してきました。前夜入りで、午後10時ごろ到着したのですが、ちょっと街を歩いてみたらスーパーマーケット(頂好Wellcome)がまだ空いていたのでお土産を購入。レシートを貰うと・・・

IMG_20171215_090551

こんな紙もついてきました。というか台湾で買い物すると常にレシートのほかにもう一枚、紙がついてきますよね。

これなんだろう?確定申告とかで使うのかな?と勝手に想像してましたが・・・なんと「宝くじ」らしいです!

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B1%E4%B8%80%E7%99%BA%E7%A5%A8

税の徴収を確実にするために、すべての領収書に統一の番号を振るようにしただけでなく、その番号を使ったくじびきを2ヶ月に1回行い、同じ番号の領収書を持っている人には国が当選金を支払うという制度なんですね。

自分は全く知らずに、これまで捨ててました(泣。これから台湾旅行に行く人はこの紙、ちゃんととっておかないとモッタイナイですね!日本人でも当選金もらえるらしいですよ。

で、「おもしろいねー」というだけじゃなく、これってけっこう、政策を考える上で先進的な事例じゃないかと思うわけです。最近、公共政策の分野では、Nudge(ナッジ)という単語を何かとお騒がせなサンスティーン教授が流行らせたのですが、行動経済学というか、社会心理学というか、そういう知見を使って個人の行動を「望ましい」方向へ誘導したらどうかってアイディアがでてきてるんですね。いちばんわかりやすいのが、最近、男子用の小便器に「的」が描いてあるやつ。あれって何の意味もないけど、男ならあれを狙って放尿しますわな(女性にはわかりづらいですね・・・)。で、そういう、人間の本能というか心理みたいなものを使って、行動を誘導しようというのがNudgeというアイディアなわけです。

で、台湾のレシート、これって明らかにNudgeですよね。国が法規制で「領収書をちゃんと番号で管理しろ」と命じることはできるでしょうが、それだけじゃ、メンドウだからとか、脱税しちゃお、とか、悪魔のささやきに唆されてサボっちゃう人たちが出てくるかもしれませんよね。「じゃぁ、厳しい罰則を課せば(ディス)インセンティブになるだろう」と考えるのも従来の公共政策の考え方かと。そこで、「宝くじ」という人間の射幸心を使って、「ちゃんと番号を保存しておこう」と搦め手で誘導したのがこの台湾のレシートのイノベーションと思われるわけです。ウィキペディアによれば実際に徴税率がかなりあがったそうですし(笑。

ということで、台湾のレシートってすごいなぁ、と感心した次第。


カテゴリ: Public policy,Travel — Masa @ 9:23 AM