2023年2月6日
プノンペンの九龍城
昔、香港に九龍城といって、巨大な建物全体がスラムというところがありましたが、今回、プノンペンでそれに近いかな、というところへ行ってきました。
Borei Keilaという地区なのですが、以前留学生が、僕の授業のなかで、この地区の合意形成の事案について紹介してくれました。
どういう地区かといえば、まぁスラムみたいなところだったそうですが、市当局が地区の一部に中層の集合住宅を建ててそこに移住してもらうという事業を進めようとしました。しかし住民は猛反発。支援のNGOなんかも入って大変だったそうです。しかしすでに揉め事としては終結しているそう。
今回の渡航でその学生に会ったのですが、「博物館とかどっか行きたい所はないか?」というのでBorei Keilaに連れて行ってくれとお願いしました。
で、他の修了生と一緒にBorei Keilaに行ってきました。
外から見ると、ちょっとキツキツに詰めて建てた中層のアパートといった感じ。
しかし建物どうしの間の狭い通路に入ると中はとっても薄暗い。通路の両側に店舗なんだか作業場なんだかが並んでいて、人がいるのですが、なんか陰鬱です。しかも建物の中は照明がないわけじゃないけど、ほとんど真っ暗。
こりゃ引っ越したくなくなるだろうなという感じ。怖くて建物の中に入るなんてできません。
ここは賃貸ではなくて、前のスラムの自宅との等価交換なので、低所得者層ばかりの建物ですが、賃貸や売買が可能なんですね。貸します、という横断幕が出ていました。
スラムを「改善」する事業だったのでしょうが、実際に行ってみると、スラムのままのほうが日の光が少しは入って、空気の循環ももう少しマトモだったのかもなぁと思いました。
結局こうやって縦方向に集約したことで、空地ができて、不動産開発の可能性ができたのでしょうね。
とはいえ、子どもたちが通路や街路でウロチョロと遊んでいるのを見ると、この子たちの将来はどうなるものかなぁと思った次第。
別の修了生に聞いてみたら、ここは犯罪、薬物汚染などの巣窟だそうで、どうにもならん(改善しても結局、他の場所に似たような場所ができる)と言っていました。大人たちはもうどうしようもないかもしれませんが、せめてあの子どもたちが勉強できて、未来に希望を持てるようにする方法はないものか(そんなのあればとっくに誰かやってるのでしょうが)と逡巡させられました。