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2009年10月20日

軽々しくウィンウィンというのはよくない

Win/Winというのは交渉学では重要な用語でありますが、あまりに気軽に使われるので、まじめに考えれば考えるほど、使いづらい用語です。流行語になることで、相互利益交渉の考え方が広まることは、一概に悪いとは言えないのですがね。

とはいえ、こんな形でここ数日使われているのは非常に不安です。

前原氏「羽田とともに発展を」 成田空港滑走路延長で式典
羽田空港「ハブ化」議論 鳩山首相「関空も含めてウィン・ウィン・ウィンの関係を」
前原国交相「羽田と成田はウィンウィンで」

どこの誰が入れ知恵してるんだか知りませんが、この言葉を軽率に使うのは非常に危険です。相互に利益があるような解決策を探すこと自体は間違いでないのですが、では、どれだけの恩恵が各当事者にもたらされるのか、という点については「ウィン・ウィン」という言い回しは考慮してません。極端な話、羽田に機能を集約して、成田が国際線廃止寸前でなんとか生き残る、というのもある意味ウィン・ウィンの関係でありえます。

ウィン・ウィンというのは、現状より両方ともよくなる、という意味ではありません。「Win」か、そうでないかの判断は、もし交渉/合意が破綻した場合に何が起きるかを想定した上で、その破綻状態との比較でよいか、悪いかということです。自然状態で放置した場合との比較で判断するものなのです。

ということは、成田を見捨てることが合理的かつボトムラインであるという前提に基づいて、政府がウィン・ウィンと言ってるのであれば、それは単に、少しは成田に国際線を残してあげるから、羽田にほぼすべてのフライトを集約するということを意味しているのかもしれません。個人的には、東京近辺の航空管制の脆弱性が心配なので、羽田集約は怖い気がしますが。

ウィン・ウィンなどと言われると、現状改善が前提だと誤解されがちですが、そういう意味ではないことに注意が必要です。逆に、ウィン・ウィンという言葉の意味の曖昧さを逆手にとって、自分にとって都合のいい合意を導き出そうとしている人たちの腹黒さが見え隠れするような気がします。「ウィン・ウィン」という単語を使うのであれば、誰が具体的にどういう利得を得るのかを、具体的に明示してから使うべきだと思いますし、それを明示・確約できないのであれば、うさん臭い、としか言いようがありません。


カテゴリ: Environmental policy,Negotiation — Masa @ 10:10 PM