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2025年6月30日

IST2025参加

今回の会場はISCET(労働経営科学高等研究所)というところ。地下鉄Entre Campos駅から少し歩いたところにありました。

で、registrationの時間に到着したらやはり大混雑。バッジやらノベルティやらをもらってからセッションに参加。

学会での成果や学びについてはどこかでキチンとまとめようと思いますが、特に記憶に残った点としては以下の通り:

  • サステナビリティトランジションとポピュリズム台頭の関係性(バックラッシュ)について、みんな気にしていました。それをテーマにしたセッションもあった。
  • Frank Geelsが筆頭で発表していたEVへのトランジションの比較研究で、日本の自動車産業(特にトヨタ&自工会)がいかにEV化に抗ってきたかがエビデンスとともに示されていて、「うんうん、そうだよね」という感じだった。
  • トランジション加速の実践が「Living Lab」の部会にまとめられていたのがおもしろかった。日本のアーバンデザインセンターも、欧州のLiving Labのdiscourseに乗せられれば、いろいろおもしろそうだなと思った。

あと、部会の部屋が異常に狭くてほんとに大変でした。定員20名の部屋に40名くらいの聴衆がすし詰めで、立ち見というか床に座って聞いてる人もたくさんいました。どう考えてもロジのミスだと思うのですが、「ポルトガルだもの、仕方ないよね」という雰囲気が漂ってました(笑)。どの会場も熱気はありましたが・・・単純に暑いだけだったかも。

また参加者はかなりの部分、オランダをはじめとして北欧の人と英国人が多かったです。とにかくみんな身長が高い(笑)。


カテゴリ: Europe,Lisbon,Science/Technology Policy,Transition — Masa @ 8:00 AM

 

2025年3月5日

「深夜電力」の概念がずいぶん変わったな

2010年頃だったでしょうが、オール電化でエコキュート(電動ヒートポンプ給湯器)の導入が進められた理由のひとつが、当時は、深夜電力が「余っていた」こと。

当時は原発もフツーに動いていて、ベースロード電源ってことで、24時間ずぅーっと発電していたわけですが、深夜に電力を使う人が少ないので、電力が余ってしまうわけですな。なお電力は「捨てる」ことができないので、揚水発電などで「貯める」か、あるいはそもそも原発を新設しない・動かさないという選択肢くらいしかないわけです。ということで、深夜零時でもお湯を沸かすためにガンガン電気を使ってもらえれば、おいそれと停止できない原発の電気を売れるので、原発依存度の高い電力会社にとっては都合のよいお話なわけでした。

原発事故以来、東電管内では原発がいまだに動いてないですし、たとえ柏崎刈羽の1基が再稼働したとしても全体からみれば大した量ではなく、震災以前の「深夜に電気が余る」事態は当面起きなさそうなわけです。

で、さっき自宅の電力使用量を確認できるページを見ていたら、「エコ・省エネチャレンジ」でポイントをくれるというので、なんだろうと覗いてみたら、なんと「夜間から昼間に電力使用を移したらポイントをプレゼント!」とのこと。以前は夜間に使えば安くなるのが常識でしたが、いまや昼間に使ったほうが安い(ポイントがつく)という、パラダイムが180度方向転換。

なんでやねん?と思ってよく説明を読んだら、昼間は(震災以降に急増した)太陽光発電による電力が余ってしまうのに、夜は(原発のベースロードがなくなったのに)エコキュートとかEV充電とかでむしろ需要が多い、という逆転現象のようです。まぁあたりまえといえば、あたりまえのことなんでしょうが、10年ちょっとで世の中正反対の方向へとトランジションするものなんですな。

とはいえ、まだ「夜トクプラン」などという夜間の割引は存在するようで、なんだかんだいっていまでも昼間よりは深夜のほうが需要が少ないから、太陽光を考慮しないのであれば、電力会社としては安価な発電手段が使える夜間のほうを安く設定する動機づけはあるのでしょう。

しかし、太陽光の発電単価が下がり続けているので、電力会社でさえも昼間の電力消費を推奨し始める事態に至ったということでしょう。このトレンドが続けば、太陽光発電の新設はさらに増えるのかと思います。

他方、これから10年なりの間で洋上風力が増えると、時間を問わず発電する(風次第ですが)ので、また夜間に電力が余る世界が到来するのかもしれません。なんだか不安定な時代ですな。それが再エネへのトランジションっちゅぅものなんでしょうね。


カテゴリ: Environmental policy,Science/Technology Policy — Masa @ 9:12 AM

 

2024年11月18日

革新的技術導入の合意形成について講演@第70回土木計画学研究発表会

さる週末は、岡山まで弾丸出張して、第70回土木計画学研究発表会のスペシャルセッション「革新的技術の社会実装を阻む合意形成の谷」で発表してきました。出張移動の顛末は別途書こうと思いますが、今回はマジメに発表の内容について。

正直、データに基づく実証的なお話ではなかったので、あまりインパクトのある話ではなかったとは思いますが、土木学会という工学系の技術者が集まる場で、科学技術社会論的な視点から問題提起をさせていただいた感じです。

その場で言いたかったことは、革新的技術というほどのものの導入であれば、我々の日常が便利になるという程度では済まず、社会の「構造」までをも変化させる、つまりトランジションが起きるということ。だからこそ、その導入について社会として熟議が必要ということを述べたうえで、次いで、トランジションにおけるIncumbent問題をお話しました。

Incumbent問題というのは、現在の構造下における主要ステークホルダー(incumbent)は、現在の構造の受益者であるため、彼らの「合意形成」を行う、トランジションを阻む結論へと導かれてしまうこと。よって、革新的技術についても、ステークホルダーの合意形成を図ると、結果としてトランジションを阻む方向、つまり技術導入を阻止する方向へと社会が導かれてしまうという問題があるのです。もちろんそのトランジションが長期的視点からしても望ましくないのであれば、阻止したほうがよいのでしょうが、長期的にはトランジションが必要であるにもかかわらず、短期的視点から阻止されるのであれば、人間社会として(将来世代への責任として)よろしくないことでしょう。

要は、革新的技術の導入についての社会的な熟議は必要だけど、ステークホルダーの合意形成を図ろうとすると必要な技術導入も止められちゃうよということ。で、「どないすんねん?」という問題提起をさせてもらいました。

発表時間も短かったので解決策は敢えて言いませんでしたが、たとえばトランジション・マネジメントの考えを採用するのであれば、ステークホルダーではなく、フロントランナー(未来のステークホルダー)を巻き込んでボトムアップで徐々に技術を広めていきましょうという解決策が示されているわけです。

聴衆のみなさんにどれくらい伝わったのかは微妙ですが・・・こういう問題提起を、敢えて土木技術者が集まったところで続けていきたいとは思います。

あと、何名かの方と10年以上ぶりに再会できたのが大収穫でした。時がたつのは早いw。


カテゴリ: Science/Technology Policy,Transition,Urban planning — Masa @ 1:41 PM