2014年1月29日
昨年秋に主催した国際シンポの書き起こし&その翻訳を、いまチェックしています。で、記録のなかで、Triple HelixでおなじみのHenry Etzkowitz先生が「秋のデータ(the autumn data)」と意味不明なことをおっしゃっているのです。
これはいったい何を意味しているのだろう?とずっと悶々としておりました。「秋時点でのデータ」とでも訳しておくか、と思いつつ、なんかスッキリしないので、当日録っておいたビデオを見直しました。
確かに、何度聞いても「autumn data」と聞こえるのです。
しかしどうも納得できないので、前後の話を再確認してみると、大学発起業の公式統計の不備を指摘してるところでした。むむ・・・そいえば直前で
association of university technology managers
と言っている・・・あ!そうか。
Association of University Technology Managers
すなわち略して
AUTM !!!
これって発音したら、autumnですよね。
ということでEtzkowitz先生はAUTM dataと言っていたのでした。
技術経営関係のみなさんにとっては当然のことなのかもしれませんが、この分野はまだまだトーシローのあたしとしては、目から鱗が落ちる経験でありました。
2013年10月24日
最近、「科学への信頼」というフレーズを繰り返し耳にする機会がありました。しかし、聴いているうちに「そうはいうけど、信頼ってなんだろう?」と疑問が沸いてきました。まぁこれはありがちな疑問で、信頼だの信用だの安心だの安全だの、terminologyの議論はあちこちで行われています。
むしろ自分自身が気になったのは、信頼という言葉を何と英語に訳すかです。たぶん、ほっといたら、trustと訳す人が大半でしょう。しかしtrustという言葉には、ここでいう「信頼」とはちょっと違うニュアンスがあるような気がします。たとえば、金融の文脈では"trust"は「信託」と訳されるはずです。信じて託しちゃうということですね。ですので、科学への信頼をtrust in science(正しくはscientistsやscientific communityでしょうが)みたいに訳すと、科学者たちに自分の判断を託してしまうという意味に聞こえます。
むしろここは、confidenceと訳すべきではないと思います。直訳すると「自信」なのでしょうが、主体的に何かを信じて支持するときもconfidenceといいます。たとえばオバマ大統領への支持もconfidence in Obamaといいます。ですからconfidence in scienceといえば、自分が判断を下す上で科学(的情報)を使いたいと思う、という意味合いが出てくると思います。
trustだと全権委任のcarte blancheを渡すイメージがあるので、そういう委任状が欲しい一部の科学利権を追求する人でもない限りは、やはりconfidenceという言葉を意識的に使っていったほうがよいのではないでしょうか。
2013年10月1日
先月の話ですが、ICSSに参加してきました。東大関係者多数ですが、欧州の研究者も多数参加していました。場所はAix-en-Provenceという風光明媚なところにあるAix-Marseille Universiteというところでした。

相変わらずの弾丸出張で、夜行便で当日朝、パリ経由でマルセイユに着いて、高速バスでエクサンプロヴァンスへ移動、徒歩で会場に向かいました。
で、今回、セッションに参加してみての感想を以下箇条書きで。
・合意形成の問題はsustainability scienceという領域では重要と認識されてはいるものの、具体的な手法や概念についての共通認識ができてない、という共通認識を関係者が持っている様子。ここは重要なポイントで、できるだけholisticな視点で合意形成の問題に取り組んでいただければな・・・というのが私の感想。ある特定の研究者が特定の手法を推してその学術領域でguru化するのはよくある話。sustainability scienceとしてはオープンに社会的合意形成と科学との関係を見ていただきたいし、ここなら、できそうな予感がする。
・交渉(negotiation) vs. 熟議(deliberation)という軸で観察すると、研究者の発表の中にも、neoliberalなガバナンスにおけるnegotiationの行き詰まりに対しての不満を強く感じられた。しかしその対応として、deficit model前提の一般市民への教育、みたいな方向へ傾いているようにも感じたのが少し残念。むしろdeliberativeなガバナンスのあり方を志向していただければいいのな、と思った(そこへの誘導が私の仕事かもしれない)。
・共同事実確認(joint fact-finding)について発表したのですが、背景の問題意識はかなり共有されている模様。科学的情報をいかに社会とつなぐかが重要な課題であることは誰もが認識しているみたいだったけど、そこで「どういう手段があるのか?」という疑問への回答が得られてないようだった(私も正解は知らないけど)。
・Future Earthプロジェクトは、社会・科学の接点を検討する場として、要チェック(住先生よりアドバイス頂戴しました)。
マルセイユは治安が悪いとネットで見聞きしていて、実際ホテルのまわりのスーパーマーケットにも出かけてみたのですが、確かになんか怖いので、ぜんぜん出かけませんでした。ホテルとつながってたモールにhabitatがあったのでちょっと覗いたくらい。翌朝早朝5時半にはチェックアウトしてマルセイユ空港へ。
でも、移動のバスから見上げた空の色は、ほんと綺麗だったなぁ。
