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2018年9月21日

自民党総裁選にみる選挙のいいとこ・悪いとこ

昨日自民党の総裁選があって、安倍陣営が期待してたほど票が伸びず、党員票だけでなく議員票まで石破氏側が票を伸ばしたとのこと。

「地方の反乱」うなだれる安倍陣営 圧勝意識し反発招く

あくまで自民党という組織内の選挙ですので、外野がどうこう言うのも野暮な気もしますが、(半)公的な意思決定という側面ではなかなかオモシロイ結果だなぁ、と思うのでちょっとメモっときます。

安倍陣営は、石破側につくなら何らかの制裁を加える、要は脅しの戦略を取っていたと報道されています。論功行賞人事は現在の政権の特徴でもありますので、この戦略自体は不思議ではないですし、交渉分析の観点から見ても、BATNAの悪さを強調すること自体は正しい戦略でもあります。ただし、自民党という組織の中でこれを露骨にやってしまうと、組織内の人間関係が悪くなって組織が崩壊するリスクもあります。そういう意味では正しくない戦略だったとも言えるでしょう。

また脅しの戦略が功を奏するのも、現在の選挙制度では、小選挙区で擁立してもらうこと、比例代表の届出名簿で順位を上げてもらうことが議員の大きな利害となる以上、党内で勝者の側についていること(敗者の側について制裁を受けないこと)が何より重要なためです。勝てば官軍、を推すような制度が、現在の選挙制度なわけです。中選挙区制の頃であれば同一政党から複数名立候補するので、地元で確固たる支持さえあれば、派閥の争いで敗者についても制裁が効かないので、安心して闘えたのでしょう。というか、小選挙区制にしたのも、派閥政治を排し各政党内の意見一本化を促進し、政党間の「マニフェスト」の闘いにすることで国政選挙で国民に政策を選択してもらうという意図があったわけなので、選挙制度改革が自動的に、党内の勝てば官軍的戦略へと誘導してるわけです。安倍晋三と仲間たちの性格が悪いとかいうハナシではなく、誰が総裁になっても、どの政党が与党になっても、似たようなことが起きるでしょう。

ということで戦略としては安倍陣営は圧勝してもおかしくはなかったわけですが、蓋を開けてみれば、党員票どころか国会議員まで造反する始末。

党員票が思ったより伸びなかったというのは、やはり「勝てば官軍」を狙って論功行賞の脅しをかけたことに対する不満もあるのでしょう。組織内の和を乱すというのはコノ国では好かれない戦略だと思いますし、組織全体の持続可能性を考えるのであれば、組織内で露骨な脅しをかけるのは批判されてしかるべきでしょう。理屈上、敗者は組織を離れて新党を立ち上げる戦略も可能なわけですから、信賞必罰を徹底すれば、組織が細かくバラバラになってしまい、全体としては弱体化する方向へと向かってしまいます。

また何よりおもしろかったのが、議員の造反でしょう。安倍カレー食ったのに実は石破に投票した議員が数名いるはずらしいです。しかしそれが誰かがわからないのが無記名投票のよいところ。表面的には支持を演じていても、投票ではまったく別の行動をしてもいいわけです。これは国政選挙でも同じで、匿名であるからこそ、ホンネを表現できるし、表面的な支持ではなくホンネこそが政治を左右できるのです。何らかの脅しがあったとしても、最終的には個人の自由意思で投票できる民主性を担保してるわけです。

そういう意味で、勝者1名に絞り込む選挙っていうのは、ギスギスした戦略へと誘導するかもしれませんが、匿名でホンネを投票できるって点は、とてもいい制度として評価してよさそうです。


カテゴリ: Consensus Building,Public policy — Masa @ 9:20 AM