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2012年10月22日

質的研究の課題:第40回環境システム研究論文発表会で発表

さる10月21日に和歌山大学で開かれた土木学会の「第40回環境システム研究論文発表会」で発表してきました。発表内容は、2011年度の東京大学公共政策大学院「事例研究(政策プロセスマネジメント)」ゼミの成果で、「農業分野の気候変動適応策検討のためのステークホルダー分析の提案」について発表してきました。

埼玉県の児玉地域、川越地域の農業について調査したのですが、結論としては、気候変動適応よりも、後継者、農業経営がより喫緊の課題で、長期的な気候変動についてはサプライチェーン上のほとんどのステークホルダーが関心を持っていない、ということでした。提案としては、気候変動適応化研究を行うにしても社会実装を目論むのであれば、実装において協力が必要となるステークホルダーの利害関心把握が有用であること、環境省単独ではなく農水省、経産省、その他関係省庁を巻き込んだガバナンスの形成が必要であること、などになります。

で、質疑応答のなかで、ステークホルダー分析の客観性・有意性について問われました。というのも私以外の発表は因子分析など統計的手法を用いていて、私たちのステークホルダー分析で出てきた結論がバイアスがないことを同じように確認したいというのは、当然のことなんだと思います。

私の回答としては、1)調査主体が農業や気候変動いずれについても特に強い意見を持っているわけではなく、結論を誘導することに利害関心がないこと、2)芋づる式で対象者を探して飽和してるので、十分網羅したと考えられること、3)統計上の有意性はないかもしれないが、質的研究によって新たな論点が提起されることが、社会に便益をもたらすのであれば、それは研究として意義があるのでリジェクトすべきでなかろう、という3点かと思います。

quantitativeとqualitativeの問題は一種の科学パラダイムのようなものでしょうから、今後とも、いかにお互いを認めて、共生しながら相互に高めあうか、そこがキモなのではないかと思います。

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広々とした和歌山大のキャンパス

カテゴリ: Environmental policy,Public policy,Science/Technology Policy — admin @ 2:31 PM